ぼぎわんが、来る / 澤村 伊智(KADOKAWA)「早く寝ないと“ぼぎわん”が来るよ」  登場人物に振り回されながら書いた、現代の家族の物語|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

著者から読者へ
更新日:2018年8月4日 / 新聞掲載日:2018年8月3日(第3250号)

「早く寝ないと“ぼぎわん”が来るよ」 
登場人物に振り回されながら書いた、現代の家族の物語

ぼぎわんが、来る
著 者:澤村 伊智
出版社:KADOKAWA
このエントリーをはてなブックマークに追加
ぼぎわんが、来る(澤村 伊智)KADOKAWA
ぼぎわんが、来る
澤村 伊智
KADOKAWA
  • オンライン書店で買う
本作は私のデビュー作であり、初めて書いた長編です。もともとは友人に読ませる用のもので、「オバケが出てくる怖くて面白い小説にしよう」と思って書きました。
「早く寝ないと○○が来るよ」「捕まって山に連れて行かれるよ」――幼い頃、そんな脅し文句を親や祖父母に聞かされたことのある人は多いと思いますが、本作はまさにそういうオバケが出てくる話です。祖父の故郷に伝わるオバケ「ぼぎわん」と思しき存在が、東京に住まう主人公とその妻子のもとにやって来る。自分と家族の危機を感じた主人公は、伝手を頼って霊能者たちに助けを求める……というのが大まかな話の流れです。

陳腐で子供騙し、そして荒唐無稽な内容です。謙遜でも何でもなく本当にそう思います。主な舞台は現代の東京、そして登場するオバケは大人であればまともに取り合うことのない、言わば「子供のしつけ用」。おまけに霊能者などという胡散臭い人物が何人も出てきます(うち一人の女性はピンク色の髪をしています)。どれを取っても非現実的です。「馬鹿馬鹿しい」「小学生が考えたみたいな話だ」と言われたら返す言葉もありません。

ですが、それまで英米怪奇小説やモダンホラー、実話怪談や岡本綺堂の怪談などを読んだ経験から、怖い話とは「何を書くか」ではなく「どう書くか」が大事だと考えるようになっていたので、素材が月並みであっても、やり方次第で怖くできるはずだと信じて書きました。「ぼぎわん」というオバケを一から創造したのも同じ理由からでした。現実には伝承も資料もない、究極のところは「意味を成さない平仮名四文字」でしかないものでも、上手いこと書けばオバケとして立ち現れるのでは、怖がらせることができるのでは、という試みです。

本作は現代の家族の物語になっています。これは最初から意図していたわけではありません。「家族の命が狙われている」くらいの切羽詰ったシチュエーションを描かない限り、現代でオバケの話を成立させるのは不可能だろう、という理屈で組み立てていった物語が、いつの間にか家族と向き合うことの難しさや、家庭というものの脆さの話に広がっていきました。家族とのすれ違いに悩み苦しむ人物や、他人の幸福な家庭を憎悪する人物を書いて、自分で驚いたり辛くなったりすることが何度もありました。「こんなに振り回されながら書いた話で、果たして友人は面白がってくれるだろうか」と思ったこともあります。

結果として友人にはそこそこ好評で、ものは試しと第22回日本ホラー小説大賞に応募したら賞をいただき、本になり、しかも映画化されることになりました。「怖い」「面白い」と感じてくださった人が友人以外にもいるらしい、自分のやり方はそれなりに上手く行ったようだ、と有難く嬉しい気持ちでいます。これからお読みの方にも怖がったり面白がったりしていただければいいなと思います。(さわむら・いち=作家)(三八四頁・六八〇円・KADOKAWA)
この記事の中でご紹介した本
ぼぎわんが、来る/KADOKAWA
ぼぎわんが、来る
著 者:澤村 伊智
出版社:KADOKAWA
以下のオンライン書店でご購入できます
「ぼぎわんが、来る」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
著者から読者へのその他の記事
著者から読者へをもっと見る >
文学 > 日本文学 > 怪談関連記事
怪談の関連記事をもっと見る >