警視庁公安J 書評|鈴峯 紅也(徳間文庫)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年8月5日 / 新聞掲載日:2018年8月3日(第3250号)

鈴峯 紅也著 『警視庁公安J』
執筆原点に関する回想と感想
徳間文庫

警視庁公安J
出版社:徳間文庫
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警視庁公安J(鈴峯 紅也)徳間文庫
警視庁公安J
鈴峯 紅也
徳間文庫
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「現代物のハードボイルド、書きませんか?」

十年来の畏友である編集者に、そんなことを提案された。二〇一二年の秋だった。
「いいね。初めてだけど、やってみようか」

私が快諾すると、じゃあ資料送ります、任せてください、と畏友は執筆を支えてくれようとした。心強い限りだ。

ただ私は彼が、私に畏敬の念を抱かせるほど〈本作り〉に愛と情熱を持っているけれど、他のたいがいのことに関してはズボラな奴だということを失念していた。送られてきた資料は、労基署監督官の漫画(全二巻)と、なぜかあとは全部、公安に関する物ばかりだった。そのとき彼のデスク回りにあった手近な物を、あまり考えることなく適当に段ボールに詰めたに違いない。
「私、資料って何を送りましたっけ?」

舌の根など乾く暇もないほど近い後日、B型の彼は堂々とそんなことを言っていた。

それでも資料は資料で、読み耽れば当然、降ってくるインスピレーションも固まってくる構想もある。私はA型で、素直だ。
――よし。公安でいこう。

〈現代物ハードボイルド〉、という当初の提案はどこへやら。かくて、『警視庁公安J』という、この欄に掲載して頂ける小説はスタートした。それにしても警察小説など本当に初めてだったので、まず手始めに主人公と主要人物の来歴を書いてみた。原稿用紙で一五〇枚ほどになった。内容は、J第四巻『オリエンタル・ゲリラ』までに小分けにして使ったので無駄にはなっていないが、日の目を見ることなくお蔵入りになった前日譚もある。(例えば主人公の父である総理大臣がなぜ通産省に入庁したかとか、そこからなぜ外務省に出向してまで、カタールに駐在したかなど)

この来歴は、初めての現代物・公安物の風呂敷を、どこまで広げていいかに当たりをつけたいという思惑もあって、自分としては広げに広げてみたつもりだった。OKとNGの境界線を知りたかった。
「問題ないでしょ。来歴だけで面白いっすね」

引くべき線などないと知る。だったらそんなに広げなかったと思いつつ、現在は広げすぎた風呂敷をいかに畳むかに腐心している。

二〇一三年が舞台なのは、本編の執筆開始がこの年だからだが、実は別の仕事が入って半分くらいで一度筆を止めた。再開は、我ながら複雑なことを考えていたようで容易ではなかった。物語をどこへ運ぼうとしていたか、一度や二度読み返しただけでは分からなかった。結局、脱稿は二〇一五年の秋になった。
「現代物のハードボイルド、書きませんか?」

私の畏友がどこまで真剣だったかは知らず、届いた段ボール一杯の〈公安〉の資料から、気が付けば三年が過ぎようとしていた。

そんな『警視庁公安J』も、今冬で発売から三年になる。辿り着いて初めて、物語の内容と実績のやじろべえはゆらゆらと、ようやく危うくも、釣り合いが取れるかもしれない。
この記事の中でご紹介した本
警視庁公安J/徳間文庫
警視庁公安J
著 者:鈴峯 紅也
出版社:徳間文庫
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