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更新日:2018年8月6日
/ 新聞掲載日:2018年8月3日(第3250号)
三浦 しをん著 あの家に暮らす四人の女
中公文庫
「私も同性の友人とゲラゲラ笑って気がねなく暮らす場がほしい」そう、未婚のプロ・ジェーン・スー氏をして言わしめ、織田作之助賞も受賞した本作は、まさにシングルにとって地上の楽園のような物語だ。舞台は杉並の古びた洋館。引きこもりのように出不精な刺繍作家の佐知と気ままな母・鶴代、佐知の友人の雪乃(毒舌)と多恵美(ダメ男に甘い)の四人が暮らす。それぞれ男運に恵まれず、ストーカーの闖入や謎の老人・山田など、変人たちとのご縁ばかりが深まり、毎日が笑いと珍事に事欠かない。そんなかしましい牧田家だが、実は母・鶴代に追い出されたきり行方の知れない父親の謎があり、佐知は人知れず孤独を抱えていた――佐知と雪乃の出会い、多恵美のストーカー事件、河童のミイラ騒動など、日常を揺るがす出来事に翻弄されながら、佐知は少しずつ「家族」らしきものの温かさを掴んでいく。めまぐるしい現代に、心の栄養補給をうながす温かな長篇だ。(三五二頁・六八○円・中央公論新社)
この記事の中でご紹介した本
「あの家に暮らす四人の女」出版社のホームページはこちら

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