〈資本論〉第2巻・第3巻入門 書評|デヴィッド・ハーヴェイ(作品社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年8月12日 / 新聞掲載日:2016年5月27日(第3141号)

〈資本論〉第2巻・第3巻入門 書評
『資本論』読解の困難を克服するために 
第2巻と第3巻の接続を試みる

〈資本論〉第2巻・第3巻入門
著 者:デヴィッド・ハーヴェイ
出版社:作品社
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本書は、『<資本論>入門』(作品社、2011年)に続く、デヴィッド・ハーヴェイによる『資本論』講義録の続編であり、その対象は本書のタイトルにもある通り第2巻、第3巻である。前著において、ハーヴェイは、本書の目的は『資本論』を「読者のみなさんに読んでもらうこと」としていたが、その方針は本書でも貫かれている。しかし、本書の対象が第2巻・第3巻であることは、その読解、あるいは理論的解説において固有の困難を生じさせる。

周知のように、マルクスが生前に出版することができたのは、第1巻のみであり、第2巻・第3巻は残された草稿群からエンゲルスが編集したものである。そして第2巻は、特にマルクスがその執筆に苦心した部分であり、その完成度においても、何度も書き直された八つの草稿群から七つの草稿を用いてまとめられたため、第1巻と比較して幾分低いものとなっている。また、第2巻は内容においてもすぐれて理論的であり、対象そのものの複雑さや、第1巻と第3巻を媒介するというその体系上の位置付けからも極めて専門的であり、『資本論』に興味をもつ読者であっても読みとおすことは非常に困難である。

このような困難を克服するにあたって、ハーヴェイは他の解説書等では見られないようなさまざまな工夫を凝らしているが、それが以下で述べる本書の特徴となっており、また本書を魅力的なものにしている。

本書の特徴を二点にまとめておこう。第一点は、本書の目次と『資本論』の目次を見比べてみれば容易に気がつくように、第2巻の理論的解説の中に第3巻のテーマの一部を挿入していることである。第2巻は「資本の流通過程」と題されており、その中心的なテーマは生産過程で創造された剰余価値の実現の問題と、流通過程という面から考察された資本蓄積・再生産の連続性・効率性の問題である。この連続性・効率性を考察するにあたって、「信用」の役割は非常に大きく、実際マルクスも第2巻において、「信用」の問題は第3巻のテーマであると禁欲しつつ、様々な個所で言及している。ハーヴェイは、商人資本論や信用論といった第3巻のテーマを大胆に取り入れ、このことによって「マルクスの経済学研究の統一的性格を浮きぼりにする」(19頁)ことに成功している。

第二点は、本書の目的に適うよう、歴史的・現実的な説明を豊富にちりばめていることである。第2巻には、第1巻における「労働日」や「本源的蓄積」のような章は存在しない。こうしたことが一般読者にとって第2巻を近づきがたいものにしている理由の一つなのであるが、ハーヴェイは、「マルクスの議論にもとづいて自らの想像力を羽ばたかせるならば、第2巻はますますもって、実にさまざまな論点をめぐるさらなる理論構築のための豊穣な源泉に見えてくる」(111頁)と述べている。ハーヴェイは、自らの想像力を駆使してマルクスの理論的展開を現実の問題を読み解き、歴史を解釈するツールとして用いている。こうしたハーヴェイの読解は大変魅力的であり、また読者も『資本論』体系に対する興味をかきたてられるであろう。

さて、いくつかの欠落があるとはいえ(利潤論・生産価格論等)、前著と合わせ、本書をもってハーヴェイによる『資本論』体系の読解が読者に提示されたということになる。現代世界を読み解くツールとして『資本論』体系がまだ存命であることをハーヴェイは示した。本書を読み終えた読者は、『資本論』そのものを手に取り、自らの想像力を駆使してみるとよいだろう。(森田成也・中村好孝訳)
この記事の中でご紹介した本
〈資本論〉第2巻・第3巻入門/作品社
〈資本論〉第2巻・第3巻入門
著 者:デヴィッド・ハーヴェイ
出版社:作品社
「〈資本論〉第2巻・第3巻入門」は以下からご購入できます
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