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更新日:2018年8月12日 / 新聞掲載日:2016年5月27日(第3141号)

西日本女性文学案内 書評
豊穣な西日本女性作家を一覧 
男性文学者との「アンバランスな状況」の改善を意図

西日本女性文学案内
編 集:西日本女性文学研究会
出版社:花書院
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西日本女性文学案内()花書院
西日本女性文学案内

花書院
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一九九〇年に刊行した『現代女性文学事典』(村松定孝氏との共編、東京堂出版)は、改訂版を造らねばならぬ不満の多いものだが、類書が無かった為に重宝がられた。その後、『東京新聞』に三年間にわたって連載した女性作家群に加筆した『負けない女の生き方』(博文館新社、2014・8)では二一七名を挙げているが、恣意的に選んだ読みもので、重要な作家が抜け落ちていたことを後で知り悔いが残った。

本書は、狩野啓子を代表とする西日本女性文学研究会企画による狩野、谷口絹枝、西荘保監修の、西日本(山口、福岡、大分、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄)の女性文学者を一覧できる地域限定だが画期的な女性文学事典である。

くどいほど言い続けていることだが、これまでの男性によって編集されてきた文学史・文学事典はどれも男性中心で女性作家は下位視扱いされ、歯噛みする悔しさを抱き続けてきた。「序」で狩野も同様のことを述べていて、この常態の是正に向けて研究や評価以前の段階で埋もれた女性文学者を掘り起こして表に出し、男性文学者との「アンバランスな状況を少しでも改善したい」意図にたって編集されたとある。

執筆者は、男性もかなり参加の西日本在住者四三名によるが、男性は研究会員では無いらしいのにこれほど協力を得られたのは、この研究会の活動が評価されていたからだろう。

収録作家は文政八(1825)年生まれの税所敦子から昭和五三(1978)年生まれの山崎ナオコーラまで二八九名に及んでいる。文芸ジャンルも多様で小説はじめ詩、短歌(和歌)、俳句、川柳、児童文学、脚本、随筆、評論、ノンフィクション、翻訳のほか記録文学、民話研究者、漫画家までが網羅されていてユニークであり、こういう人がいて、こういう仕事をしていたのかと、女性文学研究を主要テーマの一つとしている私だが、名前も、作品も知らなかった作家が意外に多く、忸怩たる思いに駆られながらも、新知識を得られたことはありがたかった。

石牟礼道子・宇野千代・金子みすゞ・神近市子・後藤みな子・佐多稲子・杉田久女・〓樹のぶ子・高群〓枝・仲町貞子・中村汀女・中本たか子・野上彌生子・林京子・林芙美子・村田喜代子など著名作家は当然ながら出身地を知っていたが、中村うさぎや藤野千夜が福岡出身とは知らなかった。

東京で朝日カルチャー受講から作家出発した重兼芳子や東京での仕事が多い野溝七生子、さらに伊藤比呂美・夏樹静子・柳原白蓮その他出生地とは無関係に一時期の居住・活躍期の作家が数多く囲い込まれているものの、本書によってこの地が文学豊穣の地であることを改めて認識させられた。

知らなかった作家についての知識を得られたことに感謝しながら、敢えて言えば、事典的字数制限からやむを得なかったとしても、危機的政治現況に当面しているとの認識に立つ者として、同じ過を繰り返すことのないことへの願いから、戦争協力問題への言及のみられないのが悔まれた。A4判型なのが書庫に並べるのに不便なことをつけ加えさせて頂きたい。
この記事の中でご紹介した本
西日本女性文学案内/花書院
西日本女性文学案内
編 集:西日本女性文学研究会
出版社:花書院
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