連 載 地中海とヌーヴェルヴァーグ ジャン・ドゥーシェ氏に聞く68|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年8月14日 / 新聞掲載日:2018年8月10日(第3251号)

連 載 地中海とヌーヴェルヴァーグ ジャン・ドゥーシェ氏に聞く68

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ドゥーシェ(右)とシャブロル(アヌシー映画祭にて)
JD 
 ロメールがお金持ちになったのは、本当に晩年になってからです。彼は全て自分で製作も行なっていたので、多くのお金が手元に残ったのです。
HK 
 レ・フィルム・デュ・ローザンジュという制作会社を作っています。
JD 
 制作会社の代表として、経済面を考慮に入れながら映画を作っていたのです。
HK 
 レ・フィルム・デュ・ローザンジュは、ミハエル・ハネケやラース・フォン・トリアーの配給もしていました。なので、お金の入ってくる作品が何本も手元にあったのですね。

地中海とゴダールの関係も、非常に面白いものだと思います。時代が変わるごとに、異なる地中海を撮影しています。60年代に、すでにいくつも地中海で映画を作っています。この時期で問題となっていたのは、地理的なものとしての地中海です。
JD 
 60年代のゴダールは、それまでの地中海が持っていたイメージから映画を作っています。例えば『軽蔑』は、カプリ島が舞台となります。『イタリア旅行』が撮影された場所であり、お金持ちの集まる場所でした。『気狂いピエロ』は、南仏へと逃走する作品です。他にも、『ウィークエンド』も南仏で撮影されています。
HK 
 最初の長編『勝手にしやがれ』も地中海から始まっています。パリへと戻るために、マルセイユで車を盗むベルモンドの姿から始まります。ジーン・セバーグとも南仏で出会った設定だったと思います。その背景に、『悲しみよこんにちは』を考えていたのかもしれません。
JD 
 その当時のゴダールは、地中海を神秘的な場所として考えていたのです。他の作品にも、地中海は出てくると思います。大西洋やビアリッツのような場所が、映画の中に登場するのは後になってからです。ロメールはビアリッツで映画(『緑の光線』)を作っています。
HK 
 アンドレ・テシネも『海辺のホテルにて』を、ビアリッツで撮っていますね。でも、ロメールと同じく80年代です。
JD 
 その通り、ビアリッツや大西洋が舞台となるのは、主に70年代以降です。なので、トリュフォーがそのような土地で撮影することはありませんでした。シャブロルに関しては覚えていません。
HK 
 シャブロルは、コート・ダジュールでの撮影が多かった印象があります。
JD 
 大西洋も多く撮影しています。
HK 
 結局のところ、シャブロルはそれほど多くパリを撮影していないのではないですか。
JD 
 シャブロルが、パリを撮影することはあまり多くありませんでした。というのも、シャブロルは非常にパリジャンであり続けたからです。
HK 
 あまりにも日常的になりすぎて、撮影することができなかったということですか。
JD 
 シャブロルは、パリジャンと地方出身者、二つの面を持っていました。地方出身だと言ってもいいのですが、パリで生まれ、幼少期をパリで過ごしています。なので、パリを見せることに、それほど興味を持っていませんでした。それでも、『いとこ同士』はパリを舞台とした作品です。
HK 
 ドゥーシェさんが出演した『気のいい女たち』もパリを舞台としています。他にも『ヴィオレット・ノジエール』は、占領下のパリだったと思います。他に思い当たるものでは、『ベティ』のヴェルサイユや、『虎は新鮮な肉を好む』のオルリーがありますが、パリの郊外へと出てしまっています。
JD 
 他にも部分的にパリが出てくる映画はあると思いますが、シャブロルは基本的に地方を舞台として作品を撮っていました。
HK 
 それは、彼があまりパリの風景を好んでいなかったからですか。
JD 
 そうではなく、シャブロルはバルザックの持っていた考えを引き継いでいたからです。つまり、フランスを撮影するということです。
HK 
 要するに、フランスとはパリではないということですか。
JD 
 パリはパリであって、フランスではありません。フランスには、いろいろな面があるのです。

<次号につづく>
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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