2018年7月に読まれた書評 ベスト10|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年8月15日

2018年7月に読まれた書評 ベスト10

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1位
他に類を見ない哲学と現実の架橋を試みた「新しい実在論」
なぜ世界は存在しないのか
著 者:マルクス・ガブリエル 


本書は二〇一三年に刊行されるやいなや哲学書としては異例のベストセラーを記録し全世界を驚愕させた、哲学界の新星マルクス・ガブリエル(当時三三歳)の出世作である。

本書の内容を一言で言えば、それは現代に巣喰う「無意味」の底をぶちぬいて「意味」へと突破しようとする哲学的思索の努力と要約しうるであろう。書評の続きをを読む
2位
「二一世紀の現代思想」の幕開けを告げる 
相関主義から抜け出す出口を見出す
有限性の後で 偶然性の必然性についての試論
著 者:カンタン・メイヤスー 


フーコー、ドゥルーズが逝った後、二〇〇四年にデリダが他界し、いわゆるフランス現代思想は終わったと囁かれるようになってすでに久しい。現在も少し下の世代のナンシーやバリバール、バディウといった著名な哲学者が活躍してはいるが、みな老境にある。

ならば、書評の続きをを読む
3位
マイノリティとマジョリティをつなぐ 
読めばカミングアウトが重要視される文脈にも理解が及ぶ
カミングアウト
著 者:砂川 秀樹


「カミングアウト」という言葉はメディアやインターネットにおいてはずいぶん軽いものになってしまっているが(出身県の食習慣や風習について芸能人が語り合うTV番組のタイトルにも「カミングアウト」という言葉が冠されるくらいである)、もともとは同性愛者が自らの性のあり方を異性愛者に対してオープンにしていく営みを指す。LGBTという言葉が流行語になりこそすれ、書評の続きをを読む
4位
DG政治哲学への有益な入門書 
ドゥルーズの哲学を七つの逆説を軸に描き出す
ドゥルーズ=ガタリにおける政治と国家 国家・戦争・資本主義
著 者:ギヨーム・シベルタン=ブラン


今日、政治的思考はどうなっているのか。一九六八年、革命の担い手がプロレタリアからマイノリティへ移ったと言う。そして一九八九年あるいは一九九一年、冷戦が終わった。社会主義が消え、資本主義が残った。政治的理念としての〈平等〉が潰え、〈自由〉が残った。以後〈グローバル化〉という語が思考を規定する。そしてグローバル化がリベラルと、反グローバル化がナショナリズムと組み合わされたり、リベラルとマイノリティが同じ側に位置づけられたりする。これが今日の政治的思考を規定する対立軸である。書評の続きをを読む
5位
ウロボロス的循環リズム 
近づきがたい二重らせんの回転
マニエリスム談義 驚異の大陸をめぐる超英米文学史
著 者:高山 宏  巽 孝之


本書の特徴はその対話形式にある。「談義」というタイトルはその意味で正確であると同時に注意書きにもなっている。まえがき「マニエリスト的無意識」とあとがき「マニエリスムな出会い方」を除けば、構成上の階層構造は(編集担当の方の熱意と労力か)端正なレイアウトの目次に表されているとおり、序章「なぜ、いま、マニエリスムなのか?」と終章「マニエリストはどう生きるか」の間に四つの章、第一章「アメリカン・ルネッサンスとマニエリスム」第二章「ピクチャレスク・アメリカ」書評の続きをを読む
6位
ジャーナリズムの弱点は商業主義と国家主義
メディア不信 何が問われているのか
著 者:林 香里


本書は、「メディア不信」を遡上にあげ、その現象を英米独日で国際比較し、日本のジャーナリズム状況の懸念材料を整理、問題提起するものとなっている。

著者は、日本で見られる「メディア不信→メディア不要論→メディア無関心」は、欧米の「民主主義への参加の意欲→メディア不信→メディアへの関心の高まり」と異なる、と分析する。日本の人びとのメディア不信(メディア無関心)は、ネットの技術を駆使することで強まっている商業主義や排外主義に、より一層の拍車をかけて民主主義の崩壊を引き起こす、と懸念する。書評の続きをを読む
7位
中世討論集の精華 神学的思索への誘い
トマス・アクィナス 真理論 上
著 者:トマス・アクィナス


トマス・アクィナス(1225頃―1274)の主著である『神学大全』は、1960年から2012年までの半世紀をかけて日本語に翻訳され、創文社から刊行された。日本語訳で全45巻にも及ぶこの著作を眼にして、人はその壮麗な体系的思索に圧倒される。だが、実はこの著作がトマスの全著作の七分の一程度に過ぎないことは、あまり知られていない。半世紀以上にわたる多くの研究者の協働に基づいた翻訳作業を経てもまだ、トマスの著作の大半は日本の一般読書界には知られてこなかったのである。その意味において、今回、代表作の一つである『真理論』が翻訳刊行されたことは、まことに喜ばしい快挙である。書評の続きをを読む
8位
分断が進行しつつある中で「つながり」の問いをあらためて提起
〈つながり〉の現代思想 社会的紐帯をめぐる哲学・政治・精神分析
著 者:松本 卓也  山本 圭


私たちの社会のなかで「つながり」を感じるのはどんなときだろうか。その「つながり」にはどのような理由があると考えられるだろうか。その原理や構造はどうなっているのか。

今日そうした問いが切迫したものとなるのは、とりわけ東日本大震災以後を指標として、労働や経済の不平等、学歴や地域の格差、性差や人種差別等々、「つながり」を断ち切るますます多くの分断が進行しつつあるからである。本書が試みるのは、そうした危機意識を背景に「つながり」――社会的紐帯――の問いをあらためて提起し、現代思想と総称しうる視座から一定の応答を提示することである。
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9位
公共図書館のスリリングな論集 
これまでとは異なるかたちが見えてくる
公共図書館の冒険 未来につながるヒストリー
著 者:柳 与志夫  田村 俊作 


同じく「本」を扱っていながら、これまで出版界と図書館界の距離は遠かった。

出版界からすると、図書館は本が流れていった先の受け皿のようなものだ。自分たちがつくり、売った本を、図書館がどのように受け入れ、そこでどのように利用されているかについての興味は薄かった。著者や編集者のなかには、地元の図書館に行ったことがないと事も無げに言う人がいる。実態を知らないままに、著者や出版社が図書館を「無料貸本屋」扱いし、出版不況を招いた「敵」だと決めつけているのではないか。
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10位
日露の文化交流の歴史を掘り下げる 
アーカイブや個人資料を渉猟した成果
リアリズムの幻想   日ソ映画交流史[1925-1955]
著 者:フィオードロワ・アナスタシア


日露の文化交流の歴史を――それもテーマを映画における交流、時期を昭和の最初の三〇年に絞って掘り下げた学術書である。ロシアに生まれ、日本の高校、大学、大学院で学び、日露両国で学位を取得した著者ほどこの研究にうってつけの映画学者はいない。本書はロシアのアーカイブや日本の個人蔵の資料を渉猟した成果であり、評者のような門外漢には、学術的意義が高いことは分かっても正確に評価することは難しい。しかしそれでもこの本を興味深く読めたのは、やや乱暴に飛ばし読みをしたお陰だった。本書の構成を単純化して示すなら、(1)一九三〇年前後にソ連で製作された記録映画はそのリアリズムが評価され、日本にも影響を及ぼしたという事実を指摘し、(2)その影響をソ連への留学経験のある亀井文夫の作品の中に検証し、書評の続きをを読む
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