森本平『ハードラック』(2004) 百年ノ髑髏ヲ積メバ救世ノけむーる人下痢シ過ギテ便秘|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2018年8月21日 / 新聞掲載日:2018年8月17日(第3252号)

百年ノ髑髏ヲ積メバ救世ノけむーる人下痢シ過ギテ便秘
森本平『ハードラック』(2004)

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収録歌集『ハードラック』は、邑書林のシリーズ「セレクション歌人」のうちの一冊『セレクション歌人 森本平集』の中に収められているが、少し実験的なことをやっている。語り手(短歌用語でいうところの作中主体)が連作ごとに交代し、語り手のキャラクターに合わせて文体も変わるという手法をとっている。小説ならば珍しくない手法だが、短歌では意外となかなかお目にかかれない。

この歌は「主人公の友人が歌う」と題された一幕の中に入っている。主人公に「頬傷」と呼ばれる語り手の少年は、精神を患って妄想に囚われ、古い呼び方でいうところの「電波系」となっている。そのことを表現するための文体として、ひらがなとカタカナが逆に表記されている。なお作者の森本平は、その後2015年に出した歌集『讒謗律』でも一冊まるまる同じタイプの表記を通している。スムーズに読まれることを拒否するような読みづらい文体は、内容のみならずその表記の面でも読者に不快感を植え付ける。意図的に読者にストレスを与えるというのも小説ならばありふれた技術だが短歌ではあまり見かけない。

「けむーる人(ケムール人)」とはウルトラマンシリーズに登場する宇宙人。この歌での「便」の使い方は露悪趣味としてのそれであろうが、「下痢シ過ギテ便秘」という支離滅裂なフレーズと合わせて、「電波系」の妄想ですらも結局は精神的な幼稚さに裏打ちされていることへの皮肉となっているかのようだ。
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