変動期の国際秩序とグローバル・アクター中国 書評|佐藤 壮(国際書院)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年8月18日 / 新聞掲載日:2018年8月17日(第3252号)

変動期の国際秩序とグローバル・アクター中国 書評
米中二元論に陥らないために 
米国中心の視点の相対化を

変動期の国際秩序とグローバル・アクター中国
著 者:佐藤 壮、江口 伸吾
出版社:国際書院
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世界の主要な関心が、中国の大国化に伴う米中パワーシフト(大国間の重心移動)にあることに異論はないだろう。その中で注目されるのは、米トランプ政権が国際協調主義を捨て内向きに転じる半面、グローバル・アクターとして「旧秩序」の改革を目指す中国の外交戦略である。

本書は、島根県立大学の故宇野重昭名誉学長ら同大の中国研究者と、中国外交の研究で定評のある北京大学国際関係学院の著名な研究者との間で行われた2016年3月のシンポジウム「国際秩序をめぐるグローバル・アクター中国の『学習』と『実践』」)および14年9月の両大学座談会・インタビューを基に編集された学術書である。

その狙いは、米国主導の既存の国際秩序と中国が目指す国際秩序が「共振し相互触発するプロセスや、国際変動と中国国内の政治・経済・社会の統治機構が連動し共振する実態の把握」(佐藤壮 P207)にある。4年前に行われた座談会でのやり取りが古さを感じさせないのは、米中パワーシフトがわれわれの目前でより激しく展開されているからだろう。

折から中国共産党の習近平総書記は6月末、「外事工作会議」を三年半ぶりに開き、中国外交を「中国本位から国際主義」に転換し、グローバル・ガバナンスの改革をリードしようとする「外交思想」を明らかにした。ことしは改革開放政策導入から40年。中国が国内建設に重心を置いてきた鄧小平の実利外交からの脱皮を鮮明にしたと言ってよい。

注意しなければならないのは、貿易戦争をはじめ台湾や南シナ海問題などで摩擦が目立つ米中関係を「新冷戦」とみなし、中国外交を「米国中心の世界秩序を中国中心の世界秩序」に替える試みとみる二元論的解釈が幅を利かせていることだ。習が外事工作会議で強調しているのは「グローバル・ガバナンス・システムの改革を牽引」することであり、「中国中心の秩序」をそれに替えると言っているわけではない。

本書でもまさにこの点が、大きな論点として浮かび上がる。改革派の学者として知られる王逸舟・北京大国際関係学院副院長は、持論である「創造的介入」について「現有の国際体系、アメリカ主導の国際秩序は中国にとって利益が弊害を上回っている」とし、「対抗すべきではない」と主張する。中国が米国との「大国関係」の原則として挙げているのは「衝突せず、対抗せず」にあることは承知の通り。

そして「創造的介入」の具体的提案として(1)国際社会に対し公共財の提供を拡大(2)海洋、極地、宇宙、サイバー空間など「高辺疆区」での発展加速(3)日本、朝鮮半島、東南アジアなど中国周辺部でのアジア新秩序形成を積極的にリードする(4)外交の優先順位の引き上げーの4点(P269~270)を挙げる。いずれも習近平が17年の第19回党大会の政治報告で提起した中国外交の構想を先取りしていることがよく分かる。王とのインタビューは日中双方の学者の議論がかみ合っており、読み応えがある。

これに対し宇野は基調報告の中で、「国際秩序が欧米中心のものに一義的にまとまる時代ではなく、中国、東南アジア、イスラム世界などのそれぞれの原則と利益調和に沿った多義的なもの」(P43)と指摘。その一方で、日本(人)の外交観、国際秩序観が一義的理解にとどまり、複数の正義が同時に存在する「国際秩序の多義性への理解が不足」していると苦言を呈する。

同時に中国外交にも厳しい目を向ける。「強国化に対し多くの日本人は警戒、他方中国人は中国の未来に「独自の夢」を持ち、洞察に差がある」と、日中双方の認識のずれに着目する。そして中国は「覇権を求めない原則を先行」させるだけで、「過去の歴史と教訓を動員する方法以上の外交政策の体系化と論理が見当たらない」とし、覇権を封じる説得力のある理論化を求めている。

パワーシフトは止まらない。米中二元論に陥らないために必要なものは何か。宇野が指摘するように、米国中心の国際秩序を唯一の正義として絶対化する視点を、相対化することであろう。(一部敬称略)
この記事の中でご紹介した本
変動期の国際秩序とグローバル・アクター中国/国際書院
変動期の国際秩序とグローバル・アクター中国
著 者:佐藤 壮、江口 伸吾
出版社:国際書院
以下のオンライン書店でご購入できます
「変動期の国際秩序とグローバル・アクター中国」出版社のホームページはこちら
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