ヤングケアラー―介護を担う子ども・若者の現実 / 5516(中央公論新社)ケアや介護を担う子たちの持つ力 澁谷 智子著 ヤングケアラー ――介護を担う子ども・若者の現実|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年8月28日 / 新聞掲載日:2018年8月24日(第3253号)

ケアや介護を担う子たちの持つ力
澁谷 智子著 ヤングケアラー ――介護を担う子ども・若者の現実

ヤングケアラー―介護を担う子ども・若者の現実
著 者:澁谷 智子
出版社:中央公論新社
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ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、子どもでありながら家族の世話をする18歳未満の子を指す言葉だ。イギリスの2011年の国勢調査では、イングランドだけで16万6363人いると報告されている。日本ではヤングケアラーに注目した調査はないが、「平成24年就業構造基本調査」では、15~29歳の介護者の数として、17万7600人という数が挙げられている。

世間一般においては、子どもが家族のケアを担うということ自体、まだあまり想定されていない。子どもが病気の親や高齢の祖父母、幼い弟や妹の面倒を見ることは、“美談”と捉えられてしまうこともある。私がこれまでに行った調査では、ヤングケアラーたちは、遅刻や欠席が多くなったり、思うような成績が取れなかったり、部活や友達付き合いをあきらめたりしていた。あるヤングケアラーは、次のように語った。「本来、人間にはいろんな場所がある。家庭とか、学校とか、地域とか。でも、何かしら家庭に問題があって、自分がいられる場所を複数維持できなくなってしまう人もいる。一人の人が使えるエネルギーの限界ってある。ケアに関わっていると、学校で自分の居場所を見つけるために力を割こうという気力がなくなる。(中略)高校に入って、友達と普通に過ごすためには、話を合わせられるようにしないといけない。普段はテレビを見る時間もないのに、芸能人の話題を調べたり。(中略)そうやって調べないと、こういう簡単な会話をする時の会話の元がなくなっちゃう。携帯で調べて、ドラマの要約や先週のあらすじを見たり。すごく不自然だし、むなしくなる」。祖母の介護のために休学し、結果的に高校を中退することになった彼の言葉は、とても印象的だった。

自分のことだけに時間を使ってこられなかったヤングケアラーは、同年代に比べて、自分に自信を持ちにくい状況に置かれている。しかし、彼らは、ケアの責任と作業を担う中で、確かに身に着けた力も持っている。忍耐強いこと、年齢の割に高い生活能力があること、タイプの違う複数の役割を同時にこなせること、思いやりがあること…。これらは、仕事をしていく上でも大いに役立つ能力である。

ケアや介護を担った子たちを「かわいそう」と言うのではなく、彼らの話に耳を傾け、サポートを必要としている時には支援し、彼らの力を積極的に評価していきたい。男女問わずケアを担う人が増えていくことが予想される今後、若くしてケアを担った彼らから学ぶことは多いはずである。
この記事の中でご紹介した本
ヤングケアラー―介護を担う子ども・若者の現実/中央公論新社
ヤングケアラー―介護を担う子ども・若者の現実
著 者:澁谷 智子
出版社:中央公論新社
以下のオンライン書店でご購入できます
「ヤングケアラー―介護を担う子ども・若者の現実」出版社のホームページはこちら
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