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誰も見ていないから
更新日:2016年10月28日 / 新聞掲載日:2016年10月28日(第3162号)

誰もみていないから ⑲

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(鉛筆、越前和紙/2012年) ⒸShinjiIhara
「Thursday man」

木曜日の朝、その人は私が毎朝同じカフェでコーヒーを飲んでいることを知って、それからは時間を合わせて会いに来るようになった。一人の時間を邪魔されるから内心は会いたくないのだが、いつも窓の外から頭を覗かせて店内に居ることを確かめて入ってくるから逃れようがない。かといって来るなとも言えず、同じテーブルに座っていつも他愛もない話をしている。

オーストラリア生まれの彼は全く日本語が話せないから、一緒にコーヒーを飲んでいる30分くらいはずっと英語で会話することになる。近所で英会話の講師を探していたくらい英語に飢えていたから勉強になって悪くはないのだが、朝起きたばかりで頭の回っていないところに来られると、偏頭痛持ちの私にはその日の仕事に支障をきたしかねない。

決まって木曜日なのは、彼の仕事が休みだからだと思う。何が目的かはさておき、彼のように私に幾ばくかの興味を持って定期的に会いに来てくれる人が、昔にも一人いたことを思い出した。それは高校時代に出逢った初恋の相手である。


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