ギャングを抜けて。--僕は誰も殺さない 書評|工藤 律子(合同出版)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年8月25日 / 新聞掲載日:2018年8月24日(第3253号)

貧困から希望を求めて 
自分が進むべき道は自分が創る

ギャングを抜けて。--僕は誰も殺さない
著 者:工藤 律子
出版社:合同出版
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本書は、「子ども食堂でW杯中継を見ている小中高大学生に、老眼がすすんできたおじさんが世界地図帳を広げ、ちょっとおいで、一緒に読もうよ」といいたくなる本だ。中米のギャング集団のことが書いてある。大きめの活字と実直な写真が、どうしても伝えたい、と訴えてくる。

著者の工藤律子氏は、フォトジャーナリストの篠田有史氏と共に、ストリートチルドレンの取材、支援活動を続けている。2014年『マラス 暴力に支配される少年たち』(集英社)(第14回開高健ノンフィクション賞)で、中米のギャング集団の実状を知らせた。

主人公Aは16才。故郷のホンジュラス・第2の都市サン・ペドロ(世界で一番危険な街だった)から、ひとりでメキシコシティーにやってきた。着の身着のままの旅だった。なぜ危険な旅を? それは、「生きのびるため」「人殺しにならないため」だった。中学生になったAはギャングに入らないかと誘われる。あたりまえに、無意識に仲間に入った。現実的な唯一の選択肢だった。正式メンバーに昇格のために「人を1人殺してこい、敵、家族か知人を」と命令される。むちゃくちゃだ。Aは悩む…。「僕は誰も殺さない」そして、旅に出る。貧困から希望を求めて。豊かな国で光をみつけようと。

ひとり旅はトラブルが続いた。だが、幸運にも難民支援団体や理解のある大人と出会う。家庭に招かれ、ゆっくりおやすみなさいと、楽しい食卓と安心できる居場所を。ホンジュラスやメキシコの定番ごはんは、トウモロコシの粉をこねて薄く焼いたトルティージャだ。煮豆、トリの煮込み、魚のフライ、揚げバナナ、家庭料理。心を包み込むような味だった。
おじさんはききたい。「君だったら、どうする?」もがき、苦しみながら、なんとか道を切り開こうとしている姿をみて、ぴんとくるか? サラリーマンにとっても他人事ではない。会社で似た状況がある。決して異国の特殊な少年たちの物語ではない。

旅とは希望の入り口だ。世の中にさまざまな選択肢があることを学ぶ。自分が進むべき道は、自分が創るのだ。Aはもうすぐ21才。夢を抱く。「ホテルマンになり、人の役に立つ人生。小さくても自分の家を持つ。遅刻癖をなおして、もっと英語も勉強する。将来、体験したことを本にして、ホンジュラスの子どもたちに読んでもらいたい」おじさんは、Aが書いた本を、子ども食堂で読むのがたのしみだ。
この記事の中でご紹介した本
ギャングを抜けて。--僕は誰も殺さない/合同出版
ギャングを抜けて。--僕は誰も殺さない
著 者:工藤 律子
出版社:合同出版
以下のオンライン書店でご購入できます
「ギャングを抜けて。--僕は誰も殺さない」出版社のホームページはこちら
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