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更新日:2018年8月31日
/ 新聞掲載日:2018年8月31日(第3254号)
身体が本当に男の子になった!
村田さんの長編を楽しみにしていた。「コンビニ人間」が芥川賞を受賞して、一躍大人気になった村田さん。村田さんの作品を楽しみにしていたのは、もちろん私だけではないだろう。以前、アイルランド文学研究者の栩木伸明さんが、よい作家は螺旋を描くように書く、と言っていた。変わらぬ問題意識で同じテーマを扱いながら、常に次の位相へと進化を遂げていく。『地球星人』もまさにそのような小説だった。稲垣諭さんには、『大丈夫、死ぬには及ばない』という本をきっかけに、お会いした。この本を読んだ時期が、一つ前の長編『消滅世界』と重なったこともあるが、読みながら村田さんのことが浮かび、いつかお二人に直接話してもらいたいと思っていた。稲垣さんも最近『壊れながら立ち上がり続ける』を刊行された(刊行のタイミングもお二人、合っている?)。話は変わるが先日、女優の大竹しのぶさんがミュージカルで「にんじん」役をやったところ、股のあたりが「きゅん!」となる瞬間が幾度かあり、役になりきったことで「身体が本当に男の子になった!」とその驚きを語っていた。不思議な話だが、村田さんの作品にも、その奇跡の芽があるのだと思う。 (S)
この記事の中でご紹介した本
「地球星人」出版社のホームページはこちら

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