プロジェクト・ジャパン メタボリズムは語る… 書評|レム・コールハース(平凡社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2018年9月1日 / 新聞掲載日:2018年8月31日(第3254号)

レム・コールハース/ハンス・ウルリッヒ・オブリスト編著 『プロジェクト・ジャパン メタボリズムは語る…』 
東京大学 西崎 航貴

プロジェクト・ジャパン メタボリズムは語る…
著 者:レム・コールハース、ハンス・ウルリッヒ・オブリスト
出版社:平凡社
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1960年代の日本に、メタボリズム―新陳代謝―と呼ばれる建築運動が起こった。担ったのは侵略と焦土と敗戦を経験した若き建築家たちである。彼らは、東京大学・丹下健三研究室から出発して、国家をも飲み込み運動を展開してゆく。社会の流動性に対応して建築・都市もその物理的形態を更新していくべきだ―そう、新陳代謝である―という思想のもと、強烈な速度で成長する国家を前に次々とその都市への提案を行い、新たな日本の姿を描き出す。メタボリズムとは文字通りプロジェクト・ジャパンであった。

本書は副題の通りメタボリズムの口述史である。2005年の丹下の死をきっかけに、かつての運動の担い手(あるいはその批判者、支援者、傍観者)が―ゴッドファーザーたる丹下を除いて―未だ健在であることに気づいた、建築家のレム・コールハースとキュレーターのハンス・ウルリッヒ・オブリストの二人は彼らにインタビューを開始する。
彼らの語りは1960年の世界デザイン会議での船出から1970年の大阪万博への結集、そして散開で常に一致する。反復されるこの構図はしばし挟まれる関係者による(時に批判的な)インタビューへの注釈と相まって、読者を強くそのダイナミズムの中へと誘い込む。

このダイナミズムをさらに魅惑的にするのが雑誌から官庁資料までを集めた豊富な図版であり、その意味で本書はメタボリズムの図版史でもある。これらは注釈同様インタビューの内容を裏付け、あるいは反証する。図版によるメタボリズムの歴史の再構成が、運動と植民地計画の連続性、海外への輸出、国土計画への発展解消、さらには戦後日本をいかに形作ったかをも雄弁に語る。

しかしこのメタボリズムの夢と希望に反して、ここに重なり続くのは建築が公的な性格を失い、計画が資本に敗北する時代である。1966年の新宿駅西口広場が反戦集会をきっかけに一夜にして集会可能な「広場」から不可能な「通路」に変更されたという出来事はその端緒であり、1985年のつくば万博の失敗が決定打となる。メタボリストが集結した最後の仕事となったこの万博では、予算と縦割り行政の限界からマスタープランが崩壊する。これは同時に、都市は計画ではなく市場原理に任せられるべきだ、という規制緩和の時代の到来を示していた。バブルと失われた20年はその帰結である。そして計画の敗北は形を変えて続いている。後記を綴る伊東豊生が被災地となった三陸の漁村を前に立ちすくむ姿が全てを物語っている。計画上あってはならないことが起こってしまったのだ。裏表紙に綴られる「建築が私的な現象ではなく、パブリックのためのものであった最後の瞬間を捉えたドキュメンタリー」という本書の自認はおよそこのような意味である。

敗戦と共にタブラ・ラサとなった日本は都市計画を求め、そしてメタボリズムを生んだ。それは文字通り戦後日本を作り上げ、世界へと波及していった。この事実と思想の強烈な証言者である本書は、未だかつてない急速な人口減少を迎える日本、あるいは計画の敗北が続く日本へ、それでも対峙しなければならない我々におおきな勇気を与えてくれるだろう。やるべきことはたくさん残されているのだ。
(太田佳代子/ジェームズ・ウェストコット/AMO編)
この記事の中でご紹介した本
プロジェクト・ジャパン メタボリズムは語る…/平凡社
プロジェクト・ジャパン メタボリズムは語る…
著 者:レム・コールハース、ハンス・ウルリッヒ・オブリスト
出版社:平凡社
以下のオンライン書店でご購入できます
「プロジェクト・ジャパン メタボリズムは語る…」出版社のホームページはこちら
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