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更新日:2018年9月7日 / 新聞掲載日:2018年9月7日(第3255号)

この社会がこの本の豊潤さをもっと味わえる社会だったらいいのに

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本書のゲラは二つに分けて大きなクリップで止められていた。それをさらに小さくいくつかに分けて読んだ。はじめはゆっくり、読むうちに、江戸時代人の宣長の文章が、少しずつなめらかに入ってくるようになった。そういえば……学生のとき、テストのために『古事記』(の読み下しされたもの)を読んでいて、思ってもみなかった面白さにバス停を乗り越した、古い記憶が蘇った。同時になぜだか、夏休みの空気の懐かしさを味わっていた。 

……とはいえ、本書の読書が隅から隅まで純粋に読む楽しみを謳歌するものだったかというと、他の〆切との鬩ぎあいだったし、時間との闘いでもあった。かっこ悪いが時々、現代の忙しなさに屈しそうになる。この社会がこの本の豊潤さをもっと味わえる社会だったらいいのに。でも熊野さんはある意味、時間の束縛を受けたからこそ、この大著を産んだ(ご本人は周囲への「見栄」だと言っている)。今の時代の逆をいく、重量感、豪華函入、日本思想が凝縮された豊饒な本の刊行に踏み切った、版元の作品社にもその姿勢に敬意を払いたい。私もそういう仕事がしたいと思う。 (S)
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