第七回 山田風太郎賞 決定|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2016年10月28日 / 新聞掲載日:2016年10月28日(第3162号)

第七回 山田風太郎賞 決定

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塩田武士氏
十月二十一日、東京都千代田区の帝国ホテル東京で第七回山田風太郎賞の決定受賞記者会見が行われ、塩田武士『罪の声』(講談社)の受賞が発表された。

選考委員を代表し、奥泉光氏が選考経過を報告した。「<グリコ森永事件>に取材した『罪の声』は、もっと切れ味のよい構成があり得たのではないかという意見もありましたが、史実を最大限に活かしながら、サスペンスミステリとして作り上げる技量、作品の力量を評価する声がもっとも多く集まり、受賞作にふさわしいという声が大勢を占めました。他に、垣根涼介さんの『室町無頼』は、応仁の乱以前という珍しい時代を扱ったエンターテインメントとして、選考委員が総じて好感を持ち、過不足のない作品として票を集めましたが、決め手となる強い評価もなかった。雫井脩介さんの『望み』は厳しいテーマを扱った作品です。今この小説が書かれる意味を重視すべきではないかと強く推す声と、テーマが収斂していく場所がやや狭かったのではないかという声と、評価が分かれました。万城目学さんの『バベル九朔』は、文章の魅力、読み進む快楽を評価する声がある一方、フィクションを作り上げている形が最後まで捉え切れなかった。中路啓太さんの『ロンドン狂瀾』は、戦前昭和を描く歴史小説で、丹念な資料の読み込みと時代を生きた人物がオールスターのように登場する分厚い群像劇ですが、小説としての魅力が、エンターテインメントという観点に立ったときには薄いという意見がありました。山田宗樹さんの『代体』は、根本になるSF的アイデアに、いくつかのアニメーションや小説に先行するものがあってそこから抜け出して魅力を発揮する小説にはなり得ていないのではないかという意見がありました」。

会場に駆け付けた塩田氏は、「デビューから五年、初めて文学賞の候補となり、受賞には感謝しかない」と喜びを語った。

罪の声(塩田 武士)講談社
罪の声
塩田 武士
講談社
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小説の着想は二十一歳のとき。<グリコ森永事件>で犯行に利用された子供が、自分と同世代で同じ関西に育ち、どこかですれ違っているかもしれないと思ったときに鳥肌が立った。新聞記者になって社会のことを勉強しながらも、いつか必ずこの題材を小説に書くという事が心の支えになっていた。「冒頭の一文を書くのにこんなに緊張したことはなかった」と話した。

記者時代に叩きこまれたのは、取材の大切さ。取材によって、机に向った時の選択肢の数が違うことを経験してきた。今回の作品では、関連のノンフィクションを全て読み、そこから情報を全て書き出し、矛盾を洗い出したという。また事件当時の八四、八五年の二年間の新聞を、広告まで含めて全て読み、時代を立体的に考察。当事件の第一人者である元読売新聞の加藤譲さんを長時間インタビューした他、昭和の仕手筋、テーラー等を取材し、主人公の設定考証のため、自身も英検準一級を取ってイギリスを訪れるという徹底ぶり。「資料は調理した食べ物で、取材は素材を活かしたサラダ。両方あってバランスがいい」。また「ノンフィクションに対する敬意はありますが、未解決事件のような、史実だけでは語り得ないものをフィクションとして提示することで、本質を浮き彫りにすることができるのでないか」等と話した。
この記事の中でご紹介した本
罪の声/講談社
罪の声
著 者:塩田 武士
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
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