詩を読む人のために 書評|三好 達治(岩波書店)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2018年9月8日 / 新聞掲載日:2018年9月7日(第3255号)

三好 達治著 『詩を読む人のために』
筑波大学 渡邊 久美子

詩を読む人のために
著 者:三好 達治
出版社:岩波書店
このエントリーをはてなブックマークに追加
学校で国語の教科書に掲載されていたもののほかは、詩を読んだことがない。知っている詩人は金子みすゞと谷川俊太郎くらい。そもそも、詩は何を言いたいのかよく分からないから、読む気が起きない。そんな人も現代では大勢いるのではないだろうか。

そのような、今までほとんど詩に触れたことのない人のために書かれたのが本書である。詩人として活躍した三好達治が、彼が今までに触れてきた詩を自身なりの解釈で説明していくのが、本書の基本スタイルだ。島崎藤村に始まり、萩原朔太郎、中原中也、堀口大学ら24人89篇の詩を取り上げている。文庫本で252ページしかない本文にこれだけ多くの作品が取り上げられているのは、初心者には詩を理解するために、さまざまな詩を読み、受け容れることが必要だと著者が考えているからだ。しかしさまざまな作品を紹介している分、各詩の解説はほとんどない。全体の語を解説しているのは、「ああ大和にしあらましかば」くらいだろう。これも、著者の「詩は各自めいめいの心で読むべきもの」という考えに拠るものだ。

こういった著者の詩に対する考え、この本を書くときに考えていたことは、全て前書きに書いてある。本文を読みはじめる前に、まずはこの前書きをじっくり読んでほしい。著者は繰り返し、詩は個人の感覚・解釈で読むべきものと言っているのだ。詩を読みはじめたころの私には、この考えはとても衝撃的であり、かつ祝福であった。国語教育の影響か、小説にしろ詩にしろ、文学というものはひとつの読み方しかできないと、我々は思いがちである。散文はまだ説明的であり、おおよそひとつの解釈にまとまるが、韻文はそうはいかない。少ない言葉で抽象的に表現されており、その分解釈の余地が多くあるので、学校教育では扱いにくい題材といえるだろう。はっきりとした答えが出る従来の問いと違い唯一の正解が出せないため、韻文への苦手意識が生まれやすいように思う。

例に漏れず、私も文学の読み方はひとつ、韻文は言葉は綺麗だけど難しいものと思っていた。しかし高名な詩人の、それを否定し個人の心のままに読み解釈していいと言った言葉が、私の中の固定観念を壊した。自分の心に沿って、自由に読んでいい。詩とは、思っていたよりも気軽に楽しめる、けれども奥の深い文学なのだと本書を通じて気づかされた。

『詩を読む人のために』は1952年に発表されたため、いわゆる近代詩しか紹介されていない。しかし文語体より口語体のほうが好きな人もいるだろう。もっと現代に近い時代の作品が好きな人もいるだろう。『教科書で出会った名詩100』(新潮社)といった名詩集から自分の好みを探すのも、詩の楽しみ方のひとつだ。
確かに詩は難しい。しかし、詩という形式だからこそ表現でき、伝えられる感情がある。その面白さを、この本を通じて多くの人に知ってもらえれば幸いである。
この記事の中でご紹介した本
詩を読む人のために/岩波書店
詩を読む人のために
著 者:三好 達治
出版社:岩波書店
以下のオンライン書店でご購入できます
「詩を読む人のために」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
【書評キャンパス】大学生がススメる本のその他の記事
【書評キャンパス】大学生がススメる本をもっと見る >
文学 > 日本文学 > 随筆・エッセー関連記事
随筆・エッセーの関連記事をもっと見る >