【横尾 忠則】やがてぼくから夢は消滅…難聴は海底の幻想のような|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2018年9月18日 / 新聞掲載日:2018年9月14日(第3256号)

やがてぼくから夢は消滅…難聴は海底の幻想のような

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ヒルトン東京にて山田詠美さんと(撮影・岩本文枝)
2018.9.3
 日経新聞夕刊に連載中の山田詠美さんの「つみびと」が133回を迎え、この辺りで一度「お食事でも」ということになって編集者と中央公論新社の単行本編集者らと新宿のヒルトン東京で鉄板ステーキを、と言っても目の前で焼かれるのではなく、仕上った料理を別室で食べるのだが、鉄板はやはりパフォーマンスがあっての鉄板焼でなきゃ。山田さんとの会話は小説家や編集者の噂話が中心で、美術の世界に比べるとどうも文学の方が欲望力学が濃厚みたい。

2018.9.4
 「文學界」の清水陽介さん来訪。会う度に彼の奇抜なファッションを見るのが愉しみだ。女性が着れば別に奇抜じゃないんだけれど、男性が着るからコスプレになる。「文學界」に何年もごぶさたしているので、「ソロソロ何か? 連載を」という話で来られる。

ggg展覧会の関係者
2018.9.5
 〈地方の何もない荒野に建っている大きいホテルの前で二、三人の人に見送られて、近くの国道でタクシーを拾うつもりだったが、一台もやってこないので、ホテルに戻ってタクシーを呼んでもらうことにした〉。こんな無作為な日常と変りばえのない夢ばかりがこのところ続いている。こーいう現実のワンシーンの断片みたいな夢なら、見る必要もないだろう。やがてぼくの中から夢は消滅の運命を辿るような気がする。

高松宮殿下記念世界文化賞の2009年~2018年の受賞者紹介の作品集のカバーに作品を提供したが、その校正刷を日本美術協会の野津修敏事務局長が持参。同時に1992年度の受賞者黒澤明さんとの2ショット写真をもらう。まさか23年後に黒澤さんと同じ賞を受けるとは想像だにしていなかった。

夕方、gggギンザ・グラフィック・ギャラリーで「幻花」の挿絵展のオープニング。来客が多く、またしばらく会わない人が誰だかわからず、ヘラヘラ笑ってすますが、こんなことをやっている内に疲れてきたので事務所の応接間に退却。ここの画廊はグラフィック専門なので来客もその関係者が多く、大半が知らない人ばかり。難聴のため話かけられても聞こえない。人の声がまるで海底でしゃべっているようで、(実際は海底は無音状態だと思うけれど)幻想を見ているようだ。

画廊とわがスタッフとの合流夕食会を銀座の赤坂璃宮で(写真参照)。初日の今日は800人の来客だったとの報告あり。今までの記録だそうだ。最近の展覧会は入場者数ばかりが話題になって、展覧会の評価はこれで決まる。

2018.9.6
 一日遅れて今日はニューヨークのアルベルツ・ベンダ画廊での新作絵画展がオープン。難聴のため飛行機に乗れないので残念ながら現地へは行けない。作家のいないオープニングになる。海外展のオープニングは実に華やかでエキサイティングなんだけれど、ここ7〜8年どの海外展にも顔を出していない。

山下裕二さんが東京都美術館で開催される「奇想の系譜」展の宣伝用ポスターではなく、装飾用作品の依頼に。B全判サイズのシルクとオフセットを併用した作品を構想してみる。「江戸のアヴァンギャルド」として国芳、其一、芦雪、蕭白、若冲、白隠、山雪、又兵衛の8作家を一挙集結させた圧巻的展覧会になるのでは? 蕭白、若冲はすでにポピュラーになってしまったが、他の作家にも新たな光が当てられ、一気に超日本美術の加熱ブームが再来するのかも知れない。タイトルの「奇想の系譜」は美術史家の辻惟雄さんの命名だけれど、すでに半世紀前に「奇想の系譜」を著し、一部の美術愛好者に大きい影響を与えた本で、ぼくもそのひとりで、当時はひっそり、ひとりで、自作の中に「奇想天外」の作風を引用したものだ。

2018.9.7
 瀬戸内さんの紹介だという浜松の春華堂が瀬戸内さんがプロデュースする和菓子のパッケージのデザインの依頼に。96歳益々メディアを賑わしますね。洋酒、日本酒のパッケージはデザインしたことがあるけれどお菓子はねえ。

2018.9.8
 以前、台湾の出版社から自伝が出て、その本が台湾の翻訳部門の文学賞を獲ったことがあるけれど、今日送って来た本は『人生唯一不變的就是變』という題名で『死なないつもり』の翻訳である。他にも台湾から2冊のオファーがあったが、一冊は図版を多用したいと、もう一冊はすでに刊行されている自伝なので両方断わる。目下、中国で自伝が翻訳中。

2018.9.9
 夢がどんどん日常の断片ばかりになってきたので、いずれ消滅するような気がすると書いたが、今週は珍しく一本しか見なかった。このまま夜の夢がなくなると昼の夢までなくなってしまう。

横尾忠則 幻花幻想幻画譚1974―1975

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