[新編]日本女性文学全集 刊行 座談=若竹千佐子・岩淵宏子・長谷川啓|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年9月21日 / 新聞掲載日:2018年9月21日(第3257号)

[新編]日本女性文学全集 刊行
座談=若竹千佐子・岩淵宏子・長谷川啓

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日本における近代文学の黎明期から現代に至るまでの、女性による文学作品を網羅した初の女性文学全集は、出版社の解散にともないやむなく中断していたのだが、このたび『[新編]日本女性文学全集』として、六花出版よりあらためて刊行が再開されることとなった。これを機に、『おらおらでひとりいぐも』で文藝賞を受賞し、同作品で芥川賞も受賞した若竹千佐子氏と、全集の監修者である岩淵宏子氏と長谷川啓氏のお三方にお話をしていただいた。 (編集部)
第1回
全集に入れたかった『おらおらで~』

岩淵 宏子氏
岩淵 
 まずは、『おらおらでひとりいぐも』の第五四回文藝賞と第一五八回芥川賞、おめでとうございます。芥川賞は若手の登竜門として認識されてきましたが、いま日本は超高齢社会で、六五歳以上が二一パーセントを超えています。そういう時代に、芥川賞史上二番目の高齢受賞で、老いをテーマにされ、まさに時宜を得た作品です。しかも、家父長制社会のなかで女性文学が明治以来追及してきた女性と自由をテーマにされており、そういう点からも、女性文学の伝統を活かした現代の山姥の物語だと私は捉えました。今回の全集にぴったりで、可能なら最後の巻に入っていただきたかったと思うぐらいでした。それからもう一つ、東北弁がすごく魅力的ですよね。芥川賞の選評でも語りの卓抜さが言われていますが、表層意識は標準語で、深層意識を方言でというかたちで非常に巧みに展開されていますね。
若竹 
 ありがとうございます。
長谷川 
 地の文まで方言を使うということは、これまで女性文学ではなかったのではないでしょうか。これはすごく画期的なことで、標準語で語られてきたものを方言で語るという非常に近代そのものを問う重要な作品となっていると思います。ここに描かれたは女の老いですけれども男の老いにも繋がる問題で、まさにいまのこの高齢化社会に発信する小説だなと感じました。それから先程岩淵さんが山姥と言われていましたが、私たちは先日『現代女性文学を読む 山姥たちの語り』という本を出しました。ここでの里に住む山姥というのは自由と孤独を抱えている存在で、若竹さんの小説は上野千鶴子さんの「おひとりさま」の影響を受けられたかなと思うところもあります。ただ私はそれ以上にとにかく描写が素晴らしいと思いました。特に夫の死後落ち込み自閉する主人公を諧謔的に描いた前半部分(尾崎翠的)。そして後半には今後の生き方についての思想が出てきています。また、石牟礼道子とも共通する点があって、標準語ではなく方言を使われている。
若竹 
 口承文芸のようなものがすごく好きなんです。方言を使ったのは、身体感覚があるというか首から上で考える言葉じゃないということですね。それとこれは東北だけなのかもしれないけれども、男も女も「おら」って言っていて、性差がなくて男言葉、女言葉というものがないんです。女が女を語る言葉がない、男の言葉を使って女を語るんだみたいなことを言う人もいるんだけど、方言は男も女もない感情から地続きの言葉だというところが私はとっても好きなんです。東北弁ってオノマトペが多くて、宮沢賢治でもたくさん使われていますが、頭がぼんやりする時は「頭がまやまやとする」とか、私たちも普通にそういう言葉を使うんですね。そういった舞台性というか、ユーモラスな感じというか、そういうのを使ってみたかったんです。でもそんなふうに褒めていただくと嬉しいです。
長谷川 
 標準語ではうまく表せる言葉がない。方言でなければ実感できないですよね。
若竹 
 その言葉を使う以外は考えられないんですよね。でもそればかりだと東北以外の人はわからないだろうから、冷静に状況を語る標準語と桃子さんの心の内をもっとリアルに具体性を持って語る言葉とを併用しました。三人称と一人称をまぜこぜにしたような文体というのは、やっていて本当に楽しかったんです。ただ自分のこういうスタイルを見据えられたのはこの四、五年で、方言を使って書こうというのはこの作品がほとんど初めてでした。
長谷川 
 もう少し早く書かれていたら、この私たちの全集に入れさせていただきたかった。その点は残念です。
若竹 
 そのお言葉だけでも嬉しいです。
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