連 載 シネフィリーの二つの世代 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く74|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年9月25日 / 新聞掲載日:2018年9月21日(第3257号)

連 載 シネフィリーの二つの世代 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く74

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エリック・ロメール(左)とドゥーシェ
HK 
 元はと言えば、最初期の『カイエ』には政治的流れがあったはずです。細部までは覚えていないのですが、大まかな流れとして、『カイエ』はその当時の知識層による批評の流れの一部として生まれ、その後すぐに若い世代によって反抗されています。言い換えると、ジョルジュ・サドゥールのようなスターリン主義者に代表される左寄りの映画批評の中に生まれ、極右とすら考えられていたアメリカ映画(サミュエル・フラーやヒッチコックの作品)を愛好する若い世代によって権力関係が変わったのではないでしょうか。これもおそらくドゥーシェさんが活躍する少し前、トリュフォーやバザンの時代に行われたことだったはずです。
JD 
 そうですが、バザンもトリュフォーも私の時代です。私たちは、同じ時期に映画批評を始めています。
HK 
 僕は、ジャン・ドゥーシェが本当に活躍したのは50年代の終わりだと考えています。ほとんど一人で、若いシネフィルたちの支えになっていたのではないでしょうか。
JD 
 そういった意味では、確かにその通りです。しかし、49年のビアリッツの映画祭の際に、その後のヌーヴェルヴァーグとなる人々は出会っています。ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ、ピエール・カスト、モーリス・シェレール(後のロメール)、コクトーが、映画祭にはいました。その当時、バザンのお気に入りであったトリュフォーも来ています。そして、私です。しかし、リヴェットとゴダールは、49年の映画祭には来ていません。50年には、第二回の映画祭がありました。しかし、本当に重要だったのは49年の映画祭で、50年は前年ほど重要なものだとは言えません。コクトーやバザンが来ることはなく、リヴェット、ゴダール、ドゥーシェがいただけだったと思います。それでも、その二度目の映画祭で、私たちは、映画館の最前列で、ニコラス・レイとアントニオーニを発見しました。
HK 
 50年はアントニオーニの最初の長編ですね。ビアリッツの映画祭や、当時の映画館の状況を踏まえた上で、初めてアメリカ映画がフランスのシネフィルの目に本格的に晒されることになった時期だったと言えるのではないですか。
JD 
 アメリカ映画が、フランスの映画の歴史に本格的に登場したのは50年代からです。
HK 
 アメリカ映画がシネフィルによって評価され始めた時期と、日本映画がフランスで認知され始めたのは、同じ時期だったのではないでしょうか。
JD 
 そうかもしれませんが、日本映画は昔のフランスでは今ほど知られていませんでした。
HK 
 50年代半ばでも、溝口、黒澤あたりは知られていなかったのですか。
JD 
 考えてみると、あなたの言っている通りです。黒澤が知られるようになったのは49年もしくは50年以降です。その当時ですら、すでに大きな成功を収めていました。黒澤に続いて、溝口が発見されます。それは、53年のヴェネツィアがきっかけです。しかし、小津は50年代には、まだ十分に認知されていません。小津が、フランスで知られるようになったのは、60年代以降です。彼の死の前後あたりだったと思います。英語圏の国では、すでに知られていましたが、フランスでは63年にシネマテークが行った、小津安二郎へのオマージュが初めての上映だったはずです。その後、80年頃に大々的な上映企画があり、フランスの多くの観客に認知されました。60年代になると、批評の中では、黒澤は重要な作家であるとみなされなくなって行きます。溝口は、私にとっては昔から変わることなく最も重要な映画作家です。そして、小津も非常に重要な位置を占めています。当然、黒澤も重要です。しかし、私の考えでは、黒澤は溝口や小津、もしくはフランス、アメリカの本当に偉大な映画に匹敵する作家ではありません。それほど、複雑なことではないはずです。 〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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