送り火 書評|高橋 弘希(文藝春秋)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
更新日:2018年9月28日

傍観者でもいじめられている側としては、いじめている側と同じ
第158回芥川賞 高橋弘希 「送り火」

送り火
著 者:高橋 弘希
出版社:文藝春秋
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送り火(高橋 弘希)文藝春秋
送り火
高橋 弘希
文藝春秋
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7月18日、芥川賞が発表された。ニュースで見たとき、一番に印象的だったのは作者の高橋弘希さんの前髪の長い姿と、作品の暗そうな題名だった。とっても気になったので、今回は「送り火」(初出『文藝界』5月号)を選んだ。

中学3年生の歩は、東京から父の転勤先の青森県、平川市に引っ越し、全校生徒12人の小さな中学校に転入することになる。もともと転勤が多い家のため、友達と馴染むのも早かった歩は、リーダー格の友達に誘われて、賭け事をするようになる。その賭け事は、毎回同じ人が負けるように仕組まれていた。歩は暴力をふるうことで自分を満たす友達に危機感を感じ始めるが、一定の距離を置き、見て見ぬふりをしていた。

その後、賭け事だけでは済まされなくなる。賭けに負けた人は屈伸運動のあと首を絞めて“彼岸様”と呼ばれる像を見るという悪戯や、それを止めた友達が、給食で何かを混ぜられ、救急搬送される事件が相次いで起きる。不穏な空気が流れつつも、田舎のゆっくりとした夏の時間が過ぎていく町。ある日、今までのゲームの元凶である中学の先輩に呼び出された彼らは、度を越えた悪戯に巻き込まれてしまう。そのターゲットにされた少年は、今までのいじめの復讐に狂い、暴れだし――。

中学3年生という、私と同い年の主人公たち。作中にも、学校で米津玄師の「アイネクライネ」が流れているなど、「あーこの前学校で流れてたー」と私の中学校と重ねて読んでしまうところもあった。彼らの言動や、スクールカウストなどは、私がよく見ているものに近いが、周りはまじめな生徒が多いので男子がこの主人公のように賭け事のような悪い遊びをしているのは見たことがない。もしかしたら知らないところでしているのかもしれませんが……。

この話の大きなテーマは「いじめ」だと思う。主人公はいじめに直接的にはかかわらず、適度な距離を置くことで、上手く友達と付き合いをしてきたと思っていた。しかし、傍観者でもいじめられている側としては、いじめている側と同じ。私も、以前は傍観者でいたほうがうまくやれると思っていた。小学校の時、仲のいい友達がいじめられていて、先生に事情聴取をされたことがあった。そのとき先生に「いじめを止められるような人になりなさい。」と言われた。そんな当たり前のことを言われても、と思ったが、5年くらい忘れていないということは、私の心に響いた言葉なのだろう。私の中学校でも、友達がいじめの被害にあっていたのを見た。いじめている側はただのからかいに過ぎない、楽しそうに笑っていた。いじめられている側は泣いていた。私は先生の言葉を胸に少し勇気を振り絞った。

話自体は、重たく、暗いところが多いのだが、中学生独特の雰囲気、田舎の空気、いやな空気、その細かな描写が作り出した雰囲気にかなり引き込まれた。読んだ後は、何も手をつけることができなかった。この不思議な感情はいつまでも忘れることができない。
夏らしい花を見つけました。
この記事の中でご紹介した本
送り火/文藝春秋
送り火
著 者:高橋 弘希
出版社:文藝春秋
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