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誰も見ていないから
更新日:2016年9月23日 / 新聞掲載日:2016年9月23日(第3157号)

誰もみていないから ⑭

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誰もみていないから ⑭
〈2be1〉(油彩、キャンバス/53×53cm/2015年)ⒸShinjiIhara

「クリスタル・カロ」
知らない人に初めて出会った時は必ず頭の何処かでこの人は絵にならないだろうかと密かに考えている。大体の場合は、枠にはまらないか、タイミングが合わず声をかけるまでに至らないケースがほとんどだが、その日は違った。個展会場に現れた彼は、以前からメールのやりとりはしていたが、実際に会ってみると想像していたイメージと大きく違っていた。そのギャップが琴線に触れてしまったのかもしれない。タイミングを見計らい思い切ってモデルをお願いしてみると、彼は嫌がる素振りを一つも見せずに、二日後には彼の自宅で取材をさせてもらえることになった。
ちょうど二十歳だという彼は、みんなから“カロちゃん”との愛称で親しまれ、少しルーズな格好が板についている青年。綺麗な形をした坊主頭、耳にはピアス、手にはシルバーの指輪、水晶玉のような透明感のある目が印象的であった。スラリとした体型に長い首、ボルダリングをやっていると言っていた彼の腕は美しい筋肉の付き方をしていた。
いまの彼は、私にしか描けないと思った。

(いはら・しんじ氏=画家)
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