オリバー・ストーンの告発「語られなかったアメリカ史」①世界の武器商人アメリカ誕生 書評|オリバー・ストーン(あすなろ書房)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2016年10月28日 / 新聞掲載日:2016年10月28日(第3162号)

オリバー・ストーンの告発「語られなかったアメリカ史」①世界の武器商人アメリカ誕生 書評
新たな視点を考えさせるきっかけに
大人が読んでも十分に読み応えのある作品

オリバー・ストーンの告発「語られなかったアメリカ史」①世界の武器商人アメリカ誕生
出版社:あすなろ書房
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大量殺戮兵器を生んだ第一次世界大戦。世界大恐慌とニューディール政策。マンハッタン計画と広島・長崎への原爆投下…。長年、高校で歴史を教えてきた経験のある私は、『語られなかったアメリカ史』を読了して、自分はいったい何を子どもたちに教えてきたのかと自問自答した。教え慣れてきた歴史用語の背景にあるものを、人間の営みとして、血の通うものとして、子どもたちに伝えられていたのだろうか。一緒に考えることができていただろうか、と。

この本は、ベトナム戦争でアメリカ陸軍に従軍した経験もあり「プラトーン」などの作品で知られる映画監督オリバー・ストーンと歴史学者のピーター・カズニックによる『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』(早川書房)を、児童文学者のスーザン・C・バートレッティが若者向けに書き直した作品である。冒頭に掲げた出来事をはじめ、セオドア・ローズヴェルト、チャーチル、スターリン、マッカーサーなどなど、誰もが目にしたことのある名前が次々に登場する。その人物が、あの時何を考えて決断をしたのか、なぜその行動をとったのか、各人の立場と人間の心情を物語として表現し、現代を生きる私たちに考える材料を与えてくれる。原書を最大限生かしながら、新たな視点を考えさせるきっかけを与えてくれる作品に仕上がっているのは、歴史学者でもあるバートレッティならではの魅力ではないか。その面白さを享受できるのは、やはり基本的な歴史的知識があってこそ。若者向けとはいえ、いい大人である私が読んでみて、十分に読み応えのある作品だ。
日本人にとって最も興味深いのは、2巻第4部 「原爆:凡夫の悲劇的決断」だろう。戦争を知らない世代の日本人にとって、当時、多くのアメリカ人が日本人をドブネズミのような害虫のように忌み嫌っていた事実や、戦争以前から今なお続く人種差別意識の存在は、これまで抱いてきたアメリカに対するイメージを覆すことになるかもしれない。原爆投下の是非に関しては様々な意見や見方があるが、アメリカ軍の最高指導者の多くが、降伏しかけていた日本に対して原爆は不要だったと考えていたにもかかわらず、アメリカは真の標的ソ連の勢いを抑制するために原爆を投下したのであって、戦争終結や日本の被害は付随的なものに過ぎない、という事実を突きつけられたとき、現代のアメリカ人は、日本人は、原爆投下という歴史をどう評価するのであろうか。

アメリカ大統領選挙の取材を続けている私にとって興味深かったのは、「1944年シカゴ民主党全国大会」の章だ。アメリカ国民にも、国際的にも、絶大な人気を誇っていたヘンリー・ウォレスが副大統領候補に指名されなかったくだりは、予備選挙でヒラリー・クリントンを苦しめ続けたバーニー・サンダースの姿と重なる。一部の権力者の手によって歴史は作られるのか。正義と理想を貫こうとする人物は、政治にとっては邪魔な存在なのだろうか。全編を通じて、そんな問いとヒントを、現代を生きる私たちに投げかけてくれる一冊である。(鳥見真生訳)
この記事の中でご紹介した本
オリバー・ストーンの告発「語られなかったアメリカ史」①世界の武器商人アメリカ誕生/あすなろ書房
オリバー・ストーンの告発「語られなかったアメリカ史」①世界の武器商人アメリカ誕生
著 者:オリバー・ストーン
出版社:あすなろ書房
以下のオンライン書店でご購入できます
オリバー・ストーンの告発「語られなかったアメリカ史」  ②なぜ原爆は投下されたのか?/あすなろ書房
オリバー・ストーンの告発「語られなかったアメリカ史」 ②なぜ原爆は投下されたのか?
著 者:オリバー・ストーン
出版社:あすなろ書房
以下のオンライン書店でご購入できます
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