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更新日:2018年10月16日 / 新聞掲載日:2018年10月12日(第3260号)

『天皇はなぜ紙幣に描かれないのか』 小学館より刊行

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三上喜孝著『天皇はなぜ紙幣に描かれないのか 教科書が教えてくれない日本史の謎30』が小学館から刊行された。四六判並製・256頁・本体1400円。

書名を見て、「歴史のなかに経済を垣間見る本」なのかと期待しながら、これを手にしてみた。あにはからんや、タイトルに選ばれた項は、第2章のわずか9ページしか費やされていない。羊頭狗肉ということばが頭をよぎるが、我慢をして読み進めてみることにすると、意外にも「おや!」と思わせる内容の深さであった。

本書は3つの章から成り立っているが、そのほとんどは、木簡や落書きなど、「たまたま」「はからずも」残った断片的な記録を拾い上げて、これらを残していった人々の生活を想像し、描き出す作業から成り立っている。

第1章「歴史の断片から、いにしえ人の暮らしと心をよむ」では、武田信玄ゆかりの地から掘り出された石ころに書かれた文字の謎や、各地の寺に残る古い落書きの謎、戦国大名たちの贈答品の謎など、いわゆる王道的な歴史研究という観点からは、さほど重大な価値があるとも思えない謎の数々をあえて検証することで、いまの私たちの生活につながる、いにしえ人たちの生活を描き出している。

第2章「時空を超えて、歴史は再生産される」では、大学図書館の資料の中から著者が偶然見つけた石碑の拓本の謎という身近なものから、明治維新後の廃仏毀釈によって評価が一変した歴史上の人物の謎、そして、義経=チンギス・ハン伝説の謎にいたるまで、時代や時空を超えて、話が広っていく。歴史好きの人にとっては格好の座談のテーマではないだろうか。 

第3章「災害や自然環境の変化が、人びとの意識を変える」は、歴史記録に残されている災害の数々を紐解き、その教訓を探ることがテーマである。2018年(平成30年)という平成最後のこの年も、際立って災害の多い一年であった。こうした災害を目の前にして、私たちは歴史から、いったい何を学ぶことができるのだろうか。

このように、本書は、今を生きる私たちが、いにしえ人の暮らしぶりに思いをはせながら、よりよく生きるヒントを探ることのできる、ちょっとだけ知的好奇心をくすぐる読み物として楽しめる一冊ではないだろうか。 (K)

*著者の三上喜孝氏は、日本古代史を専門とする研究者で国立歴史民俗博物館教授。『落書きに歴史をよむ』(吉川弘文館)、共著に『Jr.日本の歴史2』(小学館)など著書多数。
この記事の中でご紹介した本
天皇はなぜ紙幣に描かれないのか 教科書が教えてくれない日本史の謎30/小学館
天皇はなぜ紙幣に描かれないのか 教科書が教えてくれない日本史の謎30
著 者:三上 喜孝
出版社:小学館
以下のオンライン書店でご購入できます
「天皇はなぜ紙幣に描かれないのか 教科書が教えてくれない日本史の謎30」出版社のホームページはこちら
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