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”Letter to my son"
更新日:2018年10月16日 / 新聞掲載日:2018年10月12日(第3260号)

Letter to my son(12)

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(C)Eiki Mori Courtesy KEN NAKAHASHI

東京で今年初めての夏日を記録した日、ニューヨークから小さな小包が届いた。青いインクで書かれた、その少し神経質そうな文字に見覚えがあった。

「久しぶり。元気にしているだろうか。17年前の詩集が、この6月に新装版として出版されます。表紙が4色刷りになったので、君が撮ってくれた彼の写真もようやくカラーで使うことができました。“彼が遠くから戻ってきた”ような表紙になった、と思わない? 新しい詩も一編だけ巻末に加えました。ぜひ読んでみてほしい。“君の部屋"は、今ではすっかり書庫の様相だが、本さえどかせば、あの頃と何ひとつかわっていません。いつでも遊びにおいで。また会えるのを楽しみにしています。5月、快晴のニューヨーク。キッチンの小さなテーブルで、あのカフェのバナナマフィンを頬張りながら」

詩人から届いた1冊のぺーパーバック。表紙には黒いタイトなジャケットに身を包み、煙草を持った無防備な眼差しの青年が佇んでいる。青年と初めて会った日、一番最初に撮った写真。カラーになったからなのか、写真の中の青年は記憶より少し若返って見えた。世界のどこかで、少し年をとった青年が、偶然この本を見つけて、手に取るようなことはあるのだろうか。

「ストロボの光って思った以上に眩しいね。フィルムに、というより光に閉じ込められるみたい」。目をギュッとつむりながら話す彼の声が、彼の姿が、鮮烈に蘇る。懐かしさとともに、あの頃には感じなかった親近感のようなものを覚えた。

“intimacy”。青年のことが書かれた詩だけでつくられた詩集のタイトルを指でそっとなぞる。僕はあの頃の青年とちょうど同じ年齢になっていた。
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