鈴木薫×黛秋津=対談  新たな「世界史」の見取り図  『文字と組織の世界史 新しい「比較文明史」のスケッチ』(山川出版社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

読書人紙面掲載 特集
更新日:2018年10月12日 / 新聞掲載日:2018年10月12日(第3260号)

鈴木薫×黛秋津=対談
新たな「世界史」の見取り図
『文字と組織の世界史 新しい「比較文明史」のスケッチ』(山川出版社)

このエントリーをはてなブックマークに追加
第3回
■世界史における「組織」の出現

黛 秋津氏
黛 
 今回初めて目にするのは組織という概念です。『オスマン帝国の解体』では、組織のことは本格的には触れられていませんでしたが、今回の本では組織という概念もはっきりと打ち出されました。
鈴木 
 『オスマン帝国の解体』では、世界秩序がどう変わってその中で政治単位のあり方がどう変わって、柔らかい中身をなしている人間の意識はどう変わったか、そして人々の統合のあり方がどう変わったか、その中で異質なものにどう対処するように変わったかというような、柔らかい中身と大きい容れ物について論じたもので、むしろいわゆる「東方問題」の専門領域に近い内容でした。
黛 
 要するに近代における変化というもの、大文化圏と異文化世界の政治単位の変容と西欧的な主権国家とのかかわりから見てみようということだったのでしょうか。
鈴木 
 その前に出した、『オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」』(講談社、一九九二年)では、西欧式のモデルを入れる前に政治体を支える固い殻がどういう造りであったか、固い殻の中で柔らかい中身をどうやってまとめていたかという二つの線から入っていて、後者の柔らかい中身の問題の方を『オスマン帝国の解体』で扱ったのです。
黛 
 オスマン帝国のことを「柔らかい専制」という言葉で表現していらっしゃいますが、固い殻の方はどのようにとらえられるでしょうか。
鈴木 
 その固い外側のことを国家とは言いたくないんです。国家という言葉を使うとモダン・ステイトという言葉が頭に浮かんで、非常に枠が狭まってしまう。政治単位という言い方であれば、一応単独で成り立っているポリスだろうが世界帝国だろうが入れることができるだろうと思うのです。
黛 
 けれど、オスマン帝国のような帝国を表すときに、一政治単位と言ってしまって良いのでしょうか。オスマン帝国の中には「属国」という形の政治単位もあるのですが。
鈴木 
 たとえば中国では秦、漢以降の王朝は、隋、唐、宋、元、明、清と繋がって、周辺にはバラバラの所領の集まりみたいなのはありましたが、中核部ではかなり中央集権的なシステムができていた。今の中国にしてもチベット自治区、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区がありますが、この自治区というのは清朝の時代の理藩院(りはんいん)が管理していた部分で、核心になる部分である十八省はかなりまとまっているんです。政治体にもいろいろあって、近代の国民国家のようなこぢんまりしたものから世界帝国まで、中国の天下やローマのオイクメネ(人の住む世界)そのものみたいなものもあると思えば、あれも政治体と言えると思うんです。その世界をどうまとめるかというときに、固い殻が必要になって、それを組織としてとらえようと思ったのです。
1 2 4 5 6 7
この記事の中でご紹介した本
文字と組織の世界史 新しい「比較文明史」のスケッチ/山川出版社
文字と組織の世界史 新しい「比較文明史」のスケッチ
著 者:鈴木 董
出版社:山川出版社
以下のオンライン書店でご購入できます
オスマン帝国の解体 文化世界と国民国家/講談社
オスマン帝国の解体 文化世界と国民国家
著 者:鈴木 董
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
「オスマン帝国の解体 文化世界と国民国家」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
読書人紙面掲載 特集のその他の記事
読書人紙面掲載 特集をもっと見る >
歴史・地理 > 歴史学関連記事
歴史学の関連記事をもっと見る >