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漢字点心
更新日:2018年10月16日 / 新聞掲載日:2018年10月12日(第3260号)

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連城三紀彦の短編『私の叔父さん』を読んでいたら、主人公の中年男がこんなことを言っていた。「女誑(たら)しの面目躍如だもんな、こんな若い娘と結婚すりゃ」。だますことを意味する「たらす」を「誑す」と書き表すのは、国語辞典にも載っていて、それほど珍しくはない。

とはいえ、「言べん」に「狂」を書くというその字面は、なかなかキョーレツだ。この中年男が、「大人ってのは、嘘をつけることだ」と考えているとなれば、なおさらである。

実は、彼は格別に女たらしだというわけではない。かつて自分を慕ってくれて、二十年ほど前に不慮の死を遂げた姪の面影を心のどこかに宿し続けながら、女性遍歴を重ねてきただけのことだ。そんな彼が、彼女の思い出を守るために、そして彼女の娘を守るために、大きな嘘をつく。まわりも、それに気づいている。しかし、狂ったことばでしか救えない現実というものも、大人の世界にはあるのである。
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