蒐める人 情熱と執着のゆくえ 書評|南陀楼 綾繁(皓星社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年10月13日 / 新聞掲載日:2018年10月12日(第3260号)

志にあふれたまばゆい物語 
新しい本とのつきあい方のヒントが溢れている

蒐める人 情熱と執着のゆくえ
著 者:南陀楼 綾繁
出版社:皓星社
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蒐める人。タイトルから蒐書の話かと思った。ところが、一読して驚いた。蒐書のことも語られてはいるが、それがメインなのではない。では「蒐められている」のはいったい何か。本書に語られている蒐集の話は、本というオブジェのことではなく、さらにその向こう側にある「確かなもの」なのである。

著者南陀楼綾繁がインタビューしたのは八名。書誌学の大家、稲村徹元が斎藤昌三ら愛書家と交流し、「愛書趣味」の書き手として活躍するようになった話。ミステリー研究家の戸川安宣と、手稿の保存修復に従事する花谷敦子が、江戸川乱歩の『貼雑年譜』の完全復刻版を実現した経緯。串間努が少年時代実用書と出会い、庶民の文化に魅せられ、やがて書き手となる物語。一冊の古本から所有者の痕跡を探る古本探偵であり、忘れられかけた音楽や証言の秘められた価値を見いだす記録者、河内紀の「何者にもならぬ」生き方。雑誌『日本古書通信』の名物編集長であった八十八歳(当時)の八木福次郎が若い古書店主たちに語って聞かせる古書界の今昔。古書店日月堂店主佐藤真砂の自身の分身のような斬新で息をのむ企画力に満ちた目録を打ち出す力の源。既成の本という形にこだわらない新しい表現手段を提言する都築響一の開かれた文字文化。それに、林哲夫による著者本人のインタビュー記事が加わる。どれも志にあふれたまばゆい物語。惜しむらくは一編一編があまりに短いこと。もっとじっくり話を聴いてみたいと感じた。

本書は二〇一七年に刊行された『編む人』(ビレッジプレス)の姉妹編である。『編む人』も本作も、登場する人たちは世代、立場、目的は違えど、みな同じタイプの人たち。儲からなくても好きなことをし、そして、意図せずしてその活動が人に力を与えている人たちだ。「〈蒐める人〉は、自由で、なにものにも縛られていない。彼らの話を聞いて、私は勇気づけられるとともに、自分はどうすべきかを考えさせられた。本書を読む人になっても、そうであってほしいと願う」(本書前書)と南陀楼はいう。
『編む人』、『蒐める人』。併せ読むと、本を愛する者の端くれとして勇気づけられる。そこには、新しい本とのつきあい方のヒントが溢れている。どれほど書物文化の衰退が叫ばれ、出版社が潰れ、市井の書店、古書店が姿を消そうとも、本を愛する人間が、それぞれの信じる形で情熱を傾けて本と関わっていきさえすれば、書物文化にまだまだ未来はある。まだ本を読み、本を書き、本を作り、本を売り、本と関わりながら生きてゆけると励まされる。

不安になったら本書をめくってみるとよい。本に出会い、本を介して人と知り合い、思いを実現してゆく人たちの言葉に耳を傾けるとよい。彼らにとって、本とは自己実現のための道具であり、水先案内人であり、相棒でもある。彼らが情熱と執着を傾けて蒐めているのは本という物ではなく、本の姿をした夢そのものなのだ。
この記事の中でご紹介した本
蒐める人 情熱と執着のゆくえ/皓星社
蒐める人 情熱と執着のゆくえ
著 者:南陀楼 綾繁
出版社:皓星社
以下のオンライン書店でご購入できます
「蒐める人 情熱と執着のゆくえ」出版社のホームページはこちら
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