ラプラスの魔女 書評|東野 圭吾(KADOKAWA)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2018年10月13日 / 新聞掲載日:2018年10月12日(第3260号)

東野 圭吾著 『ラプラスの魔女』 
京都女子大学 田村 美咲

ラプラスの魔女
著 者:東野 圭吾
出版社:KADOKAWA
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ラプラスの魔女(東野 圭吾)KADOKAWA
ラプラスの魔女
東野 圭吾
KADOKAWA
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「東野圭吾」。本好きかどうかに関わらず、誰しもが耳にしたことがある名前ではないだろうか。彼の作品の多くが映画化されており、人気がある作家である。

元々、東野圭吾氏はエンジニアだったことから、ミステリー作家の中でも特に科学を用いた作品や密室などのトリックを得意とする作家である。それは彼の名前を世に広めることになった『ガリレオシリーズ』を始め『ブルータスの心臓』やデビュー作である『放課後』からわかるだろう。科学と聞くと気後れする人も多いかもしれないが、その分野の知識が少ない人にもわかりやすく描かれている。又、単なる謎を解くだけのミステリーではなく、殺害動機等にも趣向が凝らされている。涙なしでは読めない作品も多数存在する。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』や『手紙』などがその代表だろう。さらに脳死や死刑についてなどの社会問題に焦点を当てた作品もある。『人魚の眠る家』や『虚ろな十字架』などである。それら数ある作品の中で東野圭吾氏の集大成と言える作品がある。それが『ラプラスの魔女』だ。科学を用いたトリックに胸をえぐられるような動機。展開の速さと面白さの中に考えさせられることがちりばめられている。

遠く離れた二ヶ所の温泉地で硫化水素による死亡が相次いだ。地球科学を専門とする教授の青江が謎の若い女性円華と出会い、難解な事件に立ち向かうという話である。事故なのか殺人なのか。事故であるという立証もできなければ、殺人とも考えにくい二つの事件、ただ共通して言えるのは気象による自然現象だが、過去のデータを見比べてみても、その場所で起こる現象とは考えられない。依頼を受けた青江は頭を抱えることになる。しかし、おこりえないことというのはただの先入観であると気づく。原因のない結果はないのだ。

物語は少しずつ伏線を張りヒントを与え、私達読者に考えさせる。様々な個性の強いキャラクターが次々と登場し、それぞれの登場場面が同時進行で進んでいくため、飽きない上に登場人物と一緒に謎を考えることができ、読む手が止まらない。しっかりとしたミステリーに人間模様が絡み、読み終えた後、きっと何か心に残るに違いない。

例えば、私達は気象や人間の行動が予知できるとしたら、未来のことも簡単に予知できてしまったら、果たして幸せなのだろうか。私達は普段の生活の中で、何分後に雨が降り出すだとか、好きな人の感情を知りたいと思う。しかし全部わかってしまったら、どうだろうか。きっとつまらなくなるのではないだろうか。人間は未来がわからないからこそ悩み苦しみ、楽しむことができるのだ。わからないからこそ努力する。それは生きる上で必要なことではないだろうか。そんなことを考えるきっかけとなる一冊だ。もちろんミステリー小説として非常に面白い。一見関係のない複数の殺人が一つにつながる時、思わず感嘆の声が漏れる。さらに、犯人に同情してしまう悲しい結末がある。ただの殺人ミステリーではないのだ。

東野圭吾氏は人間の醜さや直視したくない問題にスポットライトを当てることが非常に上手である。まだ東野圭吾の作品を読んだことのない人は、まず『ラプラスの魔女』をきっかけに氏の多様な作品を読んでほしい。そして、他の作者の本を読む入口にしてほしい。
この記事の中でご紹介した本
ラプラスの魔女/KADOKAWA
ラプラスの魔女
著 者:東野 圭吾
出版社:KADOKAWA
以下のオンライン書店でご購入できます
「ラプラスの魔女」出版社のホームページはこちら
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