岸政彦×藤井誠二=対談  沖縄からの問いかけ  岸政彦『はじめての沖縄』(新曜社)/藤井誠二『沖縄アンダーグラウンド』(講談社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年10月19日 / 新聞掲載日:2018年10月19日(第3261号)

岸政彦×藤井誠二=対談
沖縄からの問いかけ
岸政彦『はじめての沖縄』(新曜社)/藤井誠二『沖縄アンダーグラウンド』(講談社)

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第3回
■沖縄の「自治の感覚」

藤井 誠二氏
藤井 
 岸さんのこの『はじめての沖縄』に「自治の感覚」という言葉が出てきますが、こういう街が戦後長く続いたのは、もしかしたらそういう感覚があるのかも知れない。なぜやっていたんですかと聞くと「何が悪いのかわからん」という声を特に八〇代くらいの方から聞くんです。たとえば、沖縄市美里の吉原という地区は、真栄原新町と違って一軒家をどんどん業者が建てていって、そこに住んで「ちょんの間」といって間貸しをするケースが多かった。本にも書きましたが部屋に上がって女性に話を聞いていたら、隣の部屋からテレビの音が聞こえてきたことがあった。それまで僕は緊張していて気づかなかったんだけれども、よく見るとゆがんだ襖の隙間から明かりが漏れていてそこから覗いたらおじいさんとおばあさんがテレビを見ながらご飯を食べていて、終いには三線さんしんを弾き出した(笑)。そこで僕は襖を開けようかどうしようか逡巡するのですが、隣に突然日常があってこれは何なんだとものすごいショックを受けた。
岸 
 でも、襖開けてもびっくりしないと思いますよ。どうもー、みたいな。ゆっくりしてってと(笑)。
藤井 
 襖を開ける勇気は僕には……。自分だったら開けた?
岸 
 開けないかな、俺も(笑)。
藤井 
 それで階下へ降りたときに、取材した女性たちに、あれはなんなのと聞いたら、いや普通だよと。でも、なんでこうなってるのかというのが次の疑問で、そういう形態で経営しているおじいさんやおばあさんの何人かに取材に応じてもらって聞くと、何をびっくりしてるのかみたいなことを言われて呆れられるわけです。昔は襖なんかなくてカーテン一枚だったとか、そこから子どもたちも大きくなっていったんだよみたいな話を聞かされて。
岸 
 真栄原新町はバラックだったり、吉原ではそこに普通におじいとおばあが住んでいたり。「管理」してる主体がない。
藤井 
 働いている人と経営している人、地上権を持っている人と土地を持っている人と全部バラバラなんです。土地を持っている人は別の土地で食堂とかをやっていて。
岸 
 仕切ってるヤクザも何か一つあるわけではないみたいな。
藤井 
 とくに九〇年代に入ってからは組合がヤクザはなるべく入れないようにしようと。さっきの「自治の感覚」の話に戻ると、六〇年近くそういう状況でやってくると、僕がなんでそういうことを聞いているのかわからないんですね。
岸 
 当たり前すぎて。
藤井 
 何でそんなことで藤井さんは驚いてるんだと。八〇歳くらいの社交街組合の世話役の方にインタビューしてるんですが、反社会的なことをやってるんだけれども、自治会はしっかりしているし、いわゆる地回りのような自警団もしっかりしていて、写真を撮ろうものなら十秒以内で飛んでくるというように、そこにほとんど官憲の力は入れないようにして自分たちの中でうまく循環させていた。だから岸さんの「自治の感覚」ということが腑に落ちたんだよね。
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この記事の中でご紹介した本
沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち/講談社
沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち
著 者:藤井 誠二
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
はじめての沖縄/新曜社
はじめての沖縄
著 者:岸 政彦
出版社:新曜社
以下のオンライン書店でご購入できます
「はじめての沖縄」出版社のホームページはこちら
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