岸政彦×藤井誠二=対談  沖縄からの問いかけ  岸政彦『はじめての沖縄』(新曜社)/藤井誠二『沖縄アンダーグラウンド』(講談社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年10月19日 / 新聞掲載日:2018年10月19日(第3261号)

岸政彦×藤井誠二=対談
沖縄からの問いかけ
岸政彦『はじめての沖縄』(新曜社)/藤井誠二『沖縄アンダーグラウンド』(講談社)

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第5回
■「沖縄病」罪悪感込みの愛情

岸 
 たぶん覚えてないと思うけど、本が出るずっと以前に、藤井さんから沖縄の原稿を読ませてもらったときに、藤井さんに「ノスタルジックに書いたら絶対批判するよ俺は」と言ったんです。沖縄にコミットしている人はよくそうやって書きがちやねん。同族嫌悪かもしれないんだけど。最初の話に戻ると、大阪の西成や沖縄の真栄原新町のようなところって、なんか見せたいんですよね、人に。それぐらいインパクトがある場所なんです。でも、例えば「消えかかってるから話を聞いてください」とか、「私の話を残してください」みたいな語りが何で出てくるかというと、要するにそこに生きてる人間がいたんだ、っていうことなんだよね。まず、良くない地域だということが前提にあって、最初はそういう「浄化しなきゃ」みたいな感覚で見ますよね。その次に「沖縄の闇」的な、ディープ沖縄観光みたいな感じの、下世話な面白さになる段階があって、そこで止まると、ロマンチックな書き方になっちゃう。でも、それも過ぎるともう、この中で生きている女の子がいて、ヤクザがいて、隣で三線弾いてるおじいもいてって、そういうことを淡々と書くしかなくなる。
藤井 
 覚えてるよ。岸さんが嫌悪している、沖縄の飲み屋で話しかけてくるインテリ左翼親父みたいなのにはいろんな流れがあると思っていて、例えば大江健三郎さんは『沖縄ノート』(岩波新書、一九七〇年)を出しましたが、大江さんは現場にはあまり入っていないけれど非常に文学的かつ理論的に頭の中で考えて、「日本人」は駄目だと書いて自分を責めた。沖縄に対する後ろめたさとか、沖縄は反戦平和の島であるというような典型を作っていった流れは他にもあって、六〇年代はいろんな人が内地から沖縄に入って、たとえば筑紫哲也さんも内地からの特派員という形で入った。当時は島ぐるみ闘争も含めて政治的な島でそういう運動をやっているからそこに注目して取材していて、一つの沖縄のイメージが形作られて、「内地」へメッセージとして送られた。一方で全く関係のない、普通に生活している地元の人のことがなかなか伝えられてこなかったと思う。
岸 
 沖縄に対する内地リベラルのコミットメントの構造、沖縄病というものの構造を一回ちゃんと書きたいと思ってるんですけど、やっぱり罪悪感と憧れのセットなんです。ものすごく愛しててものすごく欲望している対象に対して、罪悪感を同時に持つ。罪悪感込みの愛情というのが一番依存関係のような感じに陥りやすくて、絶対離れられなくなるんです。
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この記事の中でご紹介した本
沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち/講談社
沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち
著 者:藤井 誠二
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
はじめての沖縄/新曜社
はじめての沖縄
著 者:岸 政彦
出版社:新曜社
以下のオンライン書店でご購入できます
「はじめての沖縄」出版社のホームページはこちら
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