旧約新約聖書ガイド 創世記からヨハネの黙示録まで 書評|A・E マクグラス(教文館)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年10月27日 / 新聞掲載日:2018年10月26日(第3262号)

旧約新約聖書ガイド 創世記からヨハネの黙示録まで 書評
スタンスは聖書を「正典」として矛盾なく読む姿勢 

旧約新約聖書ガイド 創世記からヨハネの黙示録まで
著 者:A・E マクグラス
出版社:教文館
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本書は、現代イギリスを代表する神学者、分子生物学の博士号をもつ神学者として積極的に発信するアリスター・E・マクグラスによる聖書「ガイド(Handbook)」の翻訳である。とりわけ本書は、New International Version(NIV)という英訳聖書に即したガイドである。本来なら本書は、このNIVと併読すべきである(本書における聖書本文の引用は『聖書 新共同訳』からであるが、NIVの英訳とはいろいろな面で微妙に異なる)。

本書の本体は、「序文」、「第1部 序論」、「第2部 聖書注解」、「第3部 資料」の3部構成となっている。また、関連する年表と図版や地図なども多く添えられており、聖書の内容理解にはとりあえず役立つ。

「第1部 序論」では、聖書全体についての解説が、本書執筆の基本姿勢とともに論じられている。

「第2部 聖書注解」が本書の中核をなし、翻訳で600頁以上にのぼる。そこでは、聖書正典66文書それぞれについて(ただし、「サムエル記 上・下」、「列王記 上・下」、「歴代誌 上・下」、「ヨハネの手紙1・2・3」は一括して)、まずそれらの内容や特質を手短にまとめ、「アウトライン」を記したのち、注釈が附されている。聖書の注解書は無数にある(そのごく一部が、「第3部 資料」の最後「さらなる読書のために」で紹介されている)が、本書は、聖書全体を対象としているので、各文書の1節1節に注釈を附すような方法は分量的に不可能である。いきおい、数節を一気に、というより、場合によっては数章を一気にまとめて注解するというスタイルである。したがって、本書の「注解」部分は、細かい釈義を述べるというより、聖書正典各文書の記述を要約する「ダイジェスト」といったほうが適切であろう。著者の考えを深く知りたければ、むしろ、この「聖書注解」部分に散りばめられた60あまりの「囲み記事(feature article)」をよく読むべきである。それらは、今日キリスト教徒やキリスト教そのものに対してむけられるだろう率直な質問(たとえば、「復活は本当に起こったのか?」446~447頁など)に答える、という体裁をとっている。

「囲み記事」における応答は、いわば中庸である。たとえば、「離婚」についての記述(409~410頁)や、黙示録をめぐる「おぞましい怪奇な宗教的なセクトやカルト」の読み方に対する留保(658頁)など、現代社会に対してある程度(著者はそう言わないだろうが)妥協的に思われる。

しかしながら、本書の基本的スタンスは、聖書を「正典」として、一貫した矛盾ない書物として読む姿勢である(「いかなる箇所も、聖書の他の箇所と矛盾するようなやり方で解釈したり応用したりすることはできない」30頁)。煎じ詰めれば、徹底して世界を聖書に即して説明しようとする態度である。これは、すでにキリスト教信仰―つまり、神が存在し、イエスは神の子でキリストであるといった信仰―を確かにしている人々には、当然の態度であるが、そうでない人々にとっては、そういった態度自体が疑問となる。

キリスト教信仰を持たない現代の人間は、たとえば、聖書にあまた記されている非科学的な奇跡について納得がいかないだろう。本書では、「奇跡」についても、「神学的」というべき説明が施されているが(430~431頁など)、キリスト教徒でない多くの日本人が納得するか(あるいは、そもそもそのような「神学的」説明が理解されるか)は疑問である。

連綿となされてきた重箱の隅を顕微鏡で拡大してつつくような聖書に関する探究すべてを網羅するなど、マクグラスといえども無理である。現代聖書学の知見からして、細かい疑義を指摘すればきりがない。いずれにせよ、最終的には聖書そのものを各自が読んで、その内容を自ら吟味するに如くはない。本書は、現代の科学者でもある1人のキリスト教徒(聖職者)が、どのように聖書やキリスト教信仰を捉えているのか、という実例としての意味はあるだろう。しかし、その捉え方そのものに同意できるか否かは別問題である。(本多峰子訳)
この記事の中でご紹介した本
旧約新約聖書ガイド 創世記からヨハネの黙示録まで/教文館
旧約新約聖書ガイド 創世記からヨハネの黙示録まで
著 者:A・E マクグラス
出版社:教文館
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「旧約新約聖書ガイド 創世記からヨハネの黙示録まで」出版社のホームページはこちら
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