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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年10月30日 / 新聞掲載日:2018年10月26日(第3262号)

連 載 映画館主義 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く79

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マリア・ベレンスン(中央)とドゥーシェ(右)
HK 
 80年代の日本は、フランスの映画批評家の目には特異な例として映っていたようで、頻繁に分析されていました。例えば、セルジュ・ダネーは日本を旅行する中で、テレビや広告といったイメージが支配的になった世界を、「外見の世界」と名付けていました。つまり、一つ一つのイメージの背後に読み取れることはなく、表面に見えることしか存在しないということです。全てのイメージが、別のイメージの上を横滑りするだけで、現実との繋がりがなくなったと言い換えることもできるはずです。映画批評の歴史を考える上で、その時代は非常に大きな転換点だったと思います。近年の作品を考えると、フランスも日本のようになりつつあるのではないでしょうか。
JD 
 今言われたことは事実です。しかしフランスは、そのような例には当てはまりません。フランス映画は、広告の世界から逃れています。今でも映画を作り続けることができているはずです。全ての面で納得がいくとは言えませんが、映画という芸術を存続させつづけている唯一の国だと思います。最初期のフランス映画、つまり1915年もしくは1920年までの無声の時代は、世界の映画史の中でも重要なものでした。ルネ・クレールやその時代の映画作家たちは、ドイツ、ロシア、アメリカの映画作家たちと比較すると、ぱっとしない存在でしたが、重要なことには変わりありません。1930年以降になると映画に音がつきます。フランス映画が再び重要なものとなったのは、この発明以降です。それ以来、様々な問題があり多くの議論がありましたが、フランス映画は存続しつづけてきました。いつの時代にも映画作家が存在し、そして本当に重要な映画作家と共に歩を進めてきました。
HK 
 確かにフランスには、今でも多くの映画作家がいると思います。映画祭に出品されている作品から考えると、アメリカよりも多いのではないですか。
JD 
 その通りだと思います。
HK 
 封切られる作品やNetflixを見ると、以前よりも多くの作品が気軽に作られているようです。一方で、その作られる作品が似たり寄ったりになってしまい、作家性のようなものが存在する余地はなくなっていると思います。
JD 
 ようするに、アメリカにおける映画産業というシステムが映画作家の独立を難しくしているのです。現存する作家の中でも、本当に重要なコッポラなような人もまだアメリカにはいますが、彼が映画作りから遠のいてしまった原因を探っていけば、近年のアメリカ映画の問題点は自ずと見えてくるはずです。
HK 
 以前から聞きたかったのですが、「映画」に固執し続けることに理由はあるのでしょうか。もしかしたら別のあり方があるかもしれません。ビデオのような映像の中に変化することも可能かもしれませんし、最近ゴダールが行おうとしているように、壁、天井、床に上映するインスタレーションのような形へと移り変わることもあり得ます。
JD 
 今挙げられた例は、決して新しいあり方ではありません。それとは正反対に、映画最初期の上映方法の延長にあります。映画の最初のあり方とは、あらゆるところでの上映でした。映写機さえあれば、映画の上演が可能だったのです。それは非常に初歩的なものでした。大きな転換点となったのは、経済のシステムです。とりわけアメリカ人によって整備されることになった、映画館という構造が20世紀を通じて支配的だったのです。“映画館主義”とでも呼べるあり方が、いかにして一つの映画・・・・・を生み出していたのかは非常に重要な点です。事実問題として、映画が産業へと移り変わっていく中で重要だったのは、それまで劇場へと足を運んでいた人々の関心を映画館へと向けさせることでした。そのために映画は演劇という文化の代わりを果たしながら、その多くを演劇から着想を得ていたのです。なので、必ずしも映画は映画館で上映されるものとは限らないのです。
〈次号につづく〉
(聞き手・写真=久保宏樹)
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