インタビュー 「ある天文学者の恋文」(原題:La Corrispondenza)ジュゼッペ・トルナトーレインタビュアー 石津文子|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2016年9月30日 / 新聞掲載日:2016年9月30日(第3158号)

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「ある天文学者の恋文」(原題:La Corrispondenza)ジュゼッペ・トルナトーレインタビュアー 石津文子

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愛する死者との魂の交感 原題に込められた3つの意味


「ある天文学者の恋文」 (C)COPYRIGHT 2015-PACO CINEMATOGRAFICA S.r.L.
『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』など若くして名声を築いた、イタリアの映画監督ジュゼッペ・トルナトーレ。ようやく60歳になったばかりの彼が新作『ある天文学者の恋文』を携え来日した。主人公は著名な天文学者エド(ジェレミー・アイアンズ)と、その教え子で秘かに愛を育むエイミー(オルガ・キュリレンコ)。ある日エドが急死するが、その後も彼からエイミーに、メールなどで連絡が続くという謎めいたラブストーリーだ。実は筆者は、『ニュー・シネマ・パラダイス』がロングランされていた映画館でアルバイトしていた経験があることを伝えると、「映画館に大きな絵看板があったのをよく覚えています。持ち帰りたいと思いましたよ。今は東京の街を歩いていても、映画館らしい映画館がなくなってしまって、寂しいですね」と語った。どこかノスタルジーを感じさせる作風だが、新作では最新の通信手段を使う男女の交流が描かれる。
――原題は『コリスポンデンツァ』ですね。

「イタリア語のコリスポンデンツァは、郵便や通信、交信の意味で、最近ではネットでのチャットなんかもそうですね。それに加え、イタリア語では未知との交信というような意味もあるんです。謎めいた何かが降りてくる、というような。19世紀始めの有名な詩人ウーゴ・フォスコロが『墳墓』という詩の中で、まさにコリスポンデンツァについて語っています。愛する死者との魂の交感というべきもの。ですからイタリア人がコリスポンデンツァと聞くと、郵便と同時にスピリチュアルなものも思い浮かべるんです。さらに3つ目の意味もあって、誰かと誰かが話していて「ピピッと来た!」と通じ合う瞬間、それもコリスポンデンツァなんですね。決して若くない男が、愛する人にメッセージを残そうとする。最新の手段を使おうとしつつも、DVDに手書きの文字を添えていたりする。つまり、何でも使わせたかったんです。年を取ると、ハイテクなものに手を出してもうまくいかない、というのはよくあること。私自身、脚本を書くのに基本的にはパソコンを使っていますが、行き詰まったりすると、手書きもします。つまりエドはすべての手段に頼ってでもエイミーに伝えたかったんです。手書きからネット、DVD、郵便まで」
――どこか新作を発表した直後に死んだデヴィッド・ボウイを彷彿させました。
「その言葉は、本当に最大の賛辞です。ありがとう。実はこの映画がイタリアで公開された頃にも、似たようなことがあったんです。ある事業家の男性が亡くなったんですが、その数ヶ月後、彼の誕生日に、工場で働いていた全員に300ユーロが届けられたんです。僕のために働いてくれてありがとう、と。まるで映画のようです。そういう映画を作ると嘘っぽいと思われがちですが、実際には映画のようなことは日常にも起きているものなんです。この作品を書く直接のきっかけとなったのは、ジャーナリストだった僕の友人でした。余命宣告をされていた彼と仲間たちで、海辺で休暇を過ごしていたんですが、そのときに娘のために買ったビデオカメラの試し撮りをしていたら、彼がそこに向かっていろいろな話しをしてくれて、最後に『チャオ!』と言って、『これを僕の葬儀で使って』と言ったんです。数ヶ月後に彼が亡くなり、みんなでそれを観たとき、その場にいた全員がものすごい感情の波に襲われたんですね。あの感覚を体験したことが、アイディアのもとになりました」。(いしづ・あやこ氏=映画評論家)
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