第9回 山田風太郎賞 決定!!|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

受賞
更新日:2018年11月2日 / 新聞掲載日:2018年11月2日(第3263号)

第9回 山田風太郎賞 決定!!

このエントリーをはてなブックマークに追加
宝島(真藤 順丈)講談社
宝島
真藤 順丈
講談社
  • オンライン書店で買う
十月二十六日、東京・千代田区の帝国ホテル東京で、第九回山田風太郎賞の選考会が行われ、真藤順丈『宝島』(講談社)の受賞が決まった。(他候補作は垣根涼介『信長の原理』、須賀しのぶ『夏空白花』、恒川光太郎『滅びの園』、湊かなえ『ブロードキャスト』)

記者会見では、選考委員の夢枕獏氏が選考経過を述べた。「『宝島』は沖縄を舞台にした話ですが、すごい熱量を感じました。私自身が小説を書きはじめた頃のことを思い出しました。作品の完成度として、伏線をきっちり回収する力などは、湊さんの『ブロードキャスト』の方が上だったのですが、多少破綻はあっても、この『宝島』の中にある熱量のようなもの、奥泉光氏の言葉ですが、「歌う力の強さ」に軍配が上がった」

その後、会見会場に駆けつけた真藤氏は「二〇〇八年にデビューして今年で十年目になりますが、これまで文学賞にノミネートされることがありませんでした。候補作の中で、僕が一番実績がなかったので、難しいだろうと思っていたのですが、こうして受賞させていただき、感慨が大きいです」と喜びを述べた。

その後、沖縄出身ではない真藤氏が、沖縄を舞台に書くことに躊躇いはなかったか、との質問に答え「自分のキャリアが半ばにきたときに、物語の力を前面に押し出せるテーマで書きたいと思い、もともと惹かれていた沖縄という題材で書こうと決めました。が、主人公たちが成長していくにつれ、沖縄の出自でない自分が、ウチナンチュの立場から書くことに躊躇いが大きくなりました。沖縄の抱えた政治的な問題を、僕自身が飲み込めていなかったんです。でもこれを超えないとだめだと思い、三年かけて書き上げました。

自分はエンタメ作家だと思っていますので、ルポルタージュではない、リーダビリティの高い読物を通じて、当時の沖縄の人々の手触りを伝えたいと思いました」と話した。

また、執筆のきっかけについては、「米兵の暴行の問題や、小学校に米軍機が墜落した事件など、戦後の沖縄を読み解くことから、自分なりに改めて現代に繋げてみたくなりました。もとは米国統治下にあった琉球警察を舞台に、警察小説的なものを書こうとしていたのですが、物資や食料を米軍基地から奪う賊の存在があったことを知り、もともと土地や物資や資源は、沖縄にあったものだと思ったときに、ただの盗みではなく、生きる場所を探したり、本来持っているものを取り返したいと思ったり、支配の鎖を引きちぎりたいと願う気持ちに、自分の小説を書くモチベーションが重なりました。

現代の日本が古希だとしたら、沖縄の戦後にこそ青春時代があったようにも感じます」

夢枕氏も注目した語りについては、「語りは今回、一番注力したところです。土地のナラティブを描きたいという思いが強かった。限定された土地の特殊な状況の中で起こっていることを、普遍化し、誰もが受け取れるものにするためには、物語がその土地のナラティブにならなければならないと」
「躊躇っていた期間は、これはセンシティブすぎるテーマではないか、と逃げようとしたところがありましたが、そのままでは、何も変わらないのではないか。小説家はどの土地の、何を書いてもいい。ただ、書くことには、覚悟をする必要があると思っています」

今後については、「構想から七年がかりで、海辺にあがった鯨の活き造りを一人でつくったような感じがあった。これまでフィクショナルなものを書くことが多かったが、今は『宝島』を経て、どこかしら社会と繋がっている物を書きたいと思っています」と話した。
この記事の中でご紹介した本
宝島/講談社
宝島
著 者:真藤 順丈
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
「宝島」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
真藤 順丈 氏の関連記事
受賞のその他の記事
受賞をもっと見る >
学問・人文 > 評論・文学研究 > 作家研究関連記事
作家研究の関連記事をもっと見る >