ローカルテレビの60年  地域に生きるメディアの証言集 書評|米倉 律(森話社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年11月3日 / 新聞掲載日:2018年11月2日(第3263号)

◇貴重な記録、史資料◇ 
地方民間放送局の生の声をまとめる

ローカルテレビの60年  地域に生きるメディアの証言集
著 者:米倉 律、小林 義寛、小川 浩一
出版社:森話社
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九月六日深夜、学部ゼミの夏合宿「地方メディアの実態を探る」で札幌に滞在中、北海道胆振東部地震が起こり、全道が一斉停電した。以後二日間電源復旧がままならない中で、状況の把握に一番役立ったのは単四乾電池一本で聞ける携帯ラジオ。テレビやネットにアクセスできる携帯やタブレットも持っていたが、フル充電してあっても限界がある。現代社会の盲点を垣間見た。

本書は北海道から九州・沖縄まで、十二の地方民間放送局(後掲)の放送幹部二十一人の生の声をまとめたものである。日本大学法学部新聞学研究所が監修、副題に「地域に生きるメディアの証言集」とあるように、いわば地方社会、文化と民間放送の歴史を語ってくれる貴重な記録、史資料として活用されるだろう。

日本の民間テレビ放送は戦後十年ほどNHKラジオが電波を独占した時期を経て誕生、ことし六十五年目を迎える。人間でいうと高齢期に入っているが、言うまでもなく、地方社会の成長は日本社会の成長であった。それから約半世紀マス・メディア、とりわけジャーナリズム機能を担ってきたのが活字、放送メディアであった。

全編を通じて、聞き手の意図もあるだろうが、創業時のみならず、地元社会(経済界)とのつながり、地域の振興はいずれも強く語られている。戦後の復興、経済の発展、自社設立の苦労と後発局登場への協力支援、その結果生じた同一市場における競争。放送メディアが新聞にとって代わる時代に入り全国的なネットワーク化は、各局が地方メディアとしての特色を色濃く醸し出すこととなり、さらにメディア融合の新時代に直面している放送人の声が反映されている。二〇一一年の東日本大震災後の災害報道への対応も然りである。

日本列島のメディアを俯瞰すると、一番北(北海道)と南(沖縄)が強いジャーナリズム性を持つとよくいわれるが、戦争とジャーナリズムを伝えようとする意識はローカルテレビに継承されている。もう一つの力点はドキュメンタリー制作を以て、地方の抱える問題、文化を伝え、何をすべきかを考えようとしていること―。

民主主義社会の発展にマス・メディアが寄与、貢献するという共通認識が敗戦から立ち直った戦後日本社会に育ったと思うが、いまそれが揺らいでいる。ことさら中央集権国家日本、その負を強調するつもりはないが、地方メディアの創業者の多くが物故し、関係者の証言、記録が消えていくなか、放送ジャーナリズム、地域ジャーナリズムに目を向けることは、(日本)社会の行く末を真剣に考えることにつながるのではないだろうか。

※掲載されているのは北海道放送、IBC岩手放送、山形放送、福島テレビ、新潟放送、山梨放送、中国放送、南海放送、高知放送、熊本放送、南日本放送、沖縄テレビ放送=以上十二地方局。長崎放送は『ジャーナリズム&メディア』第九号(日本大学法学部新聞学研究所、二〇一六年、ウェブサイトでも閲覧可)所収。
この記事の中でご紹介した本
ローカルテレビの60年  地域に生きるメディアの証言集/森話社
ローカルテレビの60年  地域に生きるメディアの証言集
著 者:米倉 律、小林 義寛、小川 浩一
出版社:森話社
以下のオンライン書店でご購入できます
「ローカルテレビの60年  地域に生きるメディアの証言集」出版社のホームページはこちら
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