平野啓一郎×武田砂鉄 対談載録 作家の思考、その背中 『考える葦』(キノブックス)と『ある男』(文藝春秋)を巡って|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年11月9日 / 新聞掲載日:2018年11月9日(第3264号)

平野啓一郎×武田砂鉄 対談載録
作家の思考、その背中
『考える葦』(キノブックス)と『ある男』(文藝春秋)を巡って

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第7回
芸人と「分人」、すっぴん風プライベート

考える葦(平野 啓一郎)キノブックス
考える葦
平野 啓一郎
キノブックス
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武田 
 『考える葦』の中に、「芸人と「分人」」というタイトルで、明石家さんまさんのことを書いていますね。自分は芸能人について書くことも多いのですが、この明石家さんま論にはなるほどと頷きました。

要約すると、明石家さんまはある時期から、「踊る!さんま御殿1」などのバラエティ番組で、若手の芸人やタレントなどがズラッと並ぶ環境で、「お前、そこでボケなアカンやろう」などと、イジって場を沸かせるようになった。芸人たちは、こういう対応がお好きでしょ、といったコミュニケーションに従事していく。でも明石家さんまの本当の面白さは、そこではない。タモリやビートたけしなど、自分より上の人たちからツッコまれているときの彼が、面白かった、と。
平野 
 やっていることが倫理的にいいかどうかは別として、例えば新春・特別番組の「ビック3」で、愛車をビートたけしにボコボコにされて、「勘弁しておくんなはれ〜」と頭抱えている姿とか、「笑っていいとも!」で、タモリさんとしゃべっているときの彼が、僕は面白かったんですよ。雛壇芸人がピリピリ緊張しながら、彼とのコミュニケーションが全て、みたいになっているのは辛いですね。
武田 
 いまのバラエティ番組はだいたいそうですよね。上の立場の芸人の前で、若手芸人がどう結果を残すかを、テレビの前で視聴者が査定しているんです。
平野 
 必死だからシンドイでしょ、見ていて。
武田 
 あいつ、今回全く使われなかったから、次は呼ばれないんだろうな、みたいな。見ている方も楽しめてないですよね。

……ちなみに、『考える葦』は、そういう芸能人論ばかり書いてある本ではありません(笑)。
平野 
 でもオードリーの若林さんが、僕の文章に興味を持ってくれたきっかけは、このエッセイなんです。それから『ドーン』を読んで、小説も気にいって、いろいろ読んでくれて。
武田 
 若林さんは『文學界』の特集でもエッセイを寄せていますね。「「ある男」になりたいと願うことが、ぼくにもある」、「分人主義には、随分と救ってもらった」と。

さんまさんのエピソードでよく語られるのが、「オフの時もしゃべりっぱなし」というもの。ずっと同じテンションでいるのがプロフェッショナルだ、という一辺倒な捉え方。一方、若林さんや又吉直樹さんのような芸人が楽屋でおとなしいのが「意外」とされる。でも本来、どんな人間もいくつもの顔を持っていて、対する場や人によって、違う自分があるはずなのに。
平野 
 今はInstagramなどもあるから、擬似プライベートの演出まで、タレント活動に組み込まれていますよね。ハリウッドセレブが近所に買い物に行く時の、服のコーディネートを模するコーディネータがいたりとか。
武田 
 「すっぴん風メイク」って言葉がありますけど、「すっぴん風プライベート」ですかね。それが高じると、自分を保つのが辛くなるでしょうね。
平野 
 無限に「自分らしさ」を上塗りしていく、矛盾。
武田 
 『ある男』を読むと、少し楽になれるかも。というところで、そろそろ終わりたいと思います。
平野 
 今日はありがとうございました。
(おわり)
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この記事の中でご紹介した本
透明な迷宮/
透明な迷宮
著 者:平野 啓一郎
出版社:
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考える葦/キノブックス
考える葦
著 者:平野 啓一郎
出版社:キノブックス
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ある男/文藝春秋
ある男
著 者:平野 啓一郎
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
マチネの終わりに/毎日新聞出版
マチネの終わりに
著 者:平野 啓一郎
出版社:毎日新聞出版
以下のオンライン書店でご購入できます
「マチネの終わりに」出版社のホームページはこちら
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