連 載 今日の映画批評家 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く81|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年11月13日 / 新聞掲載日:2018年11月9日(第3264号)

連 載 今日の映画批評家 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く81

このエントリーをはてなブックマークに追加
ドゥーシェ(左から二人目)とJ=P・ベルモンド(右端)
HK 
 今日では批評というものが失われた、とはよく言われていますよね。歴史を顧みると、ボードレールやディドロのような面白い批評家は、自身のエクリチュールの創造と批評が一体になっていたはずです。
JD 
 (映画)批評が存在しないというのは、ただ単に批評という行為が完全に台無しにされてしまったからです。私たちが行ったことは、映画批評を作ることでした。なので、それ以降は、その批評を続けていくだけでよかったのです。歴史を顧みれば容易にわかることですが、批評は徐々に衰退してしまっています。今日では、例えば自身の名前を売るためだけに、批評家になろうとするような人がたくさんいます。映画祭のディレクターになるために、あらゆることをした批評家も知っています。あいにくですが、そのような人々と相反するような方針を、私は持ち続けてきました。人生には二つの解決法があります。地位を狙うか、気品を守るか。近年になるにつれて、品位のようなものは失われつつあります。
HK 
 批評家だけではなく、イメージの世界にも当てはまりますよね。70年代の終わり頃から、映画の世界でも計画を立てることが重要になってきたはずです。映画と広告の間の差異が徐々に失われていき、映像から何かを読み取ろうとすると、企画のようなものしか見えなくなっているのではないですか。
JD 
 その通りだと思います。近年成功を収めている作品を見ると、行き着く点は常に同じです。本来、作り出される状況とは存在の一つのかたちです。しかし、その存在に関心を寄せるためには、状況に身を委ね、存在に直面するしかありません。しかし大半の人々は、存在に直面するということを好んでいないのです。存在という概念が、どこかにあるということだけで満足してしまっているのです。
HK 
 存在という問題に関することだと思うのですが、例えば映画の中にも大きな違いがあります。例えば、ドゥーシェさんの口からよく出るルノワールやラングのような偉大な映画作家の作品を見ていると、同時にいくつもの要素が見えてきます。
JD 
 非常に簡単な話です。彼らは正真正銘の映画作家だからです。だから、紛れもない生を撮ります。偉大な映画作家とは、生を生かすことのできる映画監督です。一方で、悪い映画作家は、生を見せるふりをします。
HK 
 そういった意味では、例えばクロード・ソーテの『すぎ去りし日の…』(Les choses de la vie)などは、見せかけだけの作品の代表格ですよね。
JD 
 昨日アルテ(テレビ局)でソーテの作品を見たばかりですが、すでにタイトルを忘れてしまいました。それほど重要な作品だと思わなかったのです。
HK 
 そうはいっても、ソーテは70年代にフランスで最も成功を収めていた部類の映画監督ですよね。
JD 
 ソーテは、映画製造者の中でも最良の部類の監督でした。しかし、創造的な面から見るならば、彼の存在とはちっぽけなものです。彼が、良い映画監督であったことに変わりはありません。よくできているだけです。
HK 
 ソーテの映画は今でも観客に好まれているようです。シュナイダー、ピコリ、ソーテの名前が並んでいれば、普段からは考えられないほどに、映画館に人が入ります。
JD 
 当然入るでしょう。飽きられることのない良質の映画です。
HK 
 ソーテの映画に列をなすような人々は、おそらく若い頃の思い出に浸っているのだと思いますが、ドゥーシェさんは映画を見ながらノスタルジーを感じることはないのですか。
JD 
 昔を思い出すことも多少はありますが…。
HK 
 例えば『勝手にしやがれ』を見ながら、シャンゼリゼでの撮影を思い出すことはありませんか。
JD 
 シャンゼリゼ以外にも、『カイエ』のオフィスなどもあります。しかし、私は映画を見る際に、頭の中の思い出の引き出しのようなものは考えていません。見るべきは、一つの映画作品全体です。それが、私の好きな映画とそれ以外の映画の間の、大きな違いです。 〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=ジャン・ドゥーシェ)
このエントリーをはてなブックマークに追加
ジャン・ドゥーシェ 氏の関連記事
久保 宏樹 氏の関連記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」のその他の記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」をもっと見る >
芸術・娯楽 > 映画関連記事
映画の関連記事をもっと見る >