知の創生と編集者の冒険 植田康夫の最終講義「出版の過去・現在・未来」 書評|植田 康夫(出版メディアパル)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年11月10日 / 新聞掲載日:2018年11月9日(第3264号)

知の創生と編集者の冒険 植田康夫の最終講義「出版の過去・現在・未来」 書評
出版学と編集を架橋した入門書  
どの頁からも在野性を重んじた植田理論が

知の創生と編集者の冒険 植田康夫の最終講義「出版の過去・現在・未来」
著 者:植田 康夫
出版社:出版メディアパル
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本紙の読者で、植田康夫の名前を知らない人はいないだろう。「週刊読書人」の編集主幹も務めた編集者としての顔のほか、上智大学教授の肩書きでメディア業界を目指す学生達に出版の魅力を伝え、日本だけでなく韓国、中国からの留学生を指導し、さらに日本出版学会会長として若い研究者を育てるなど、研究者・教育者の顔をもっていた。書き手としても、旺盛な執筆活動を続け、出版に関する本は、広く読書界でも読まれている。なによりも出版業界の興隆に尽力を注がれた出版人として、多彩な顔をお持ちだった。

4月に逝去され、5月に行われたお別れ会では、大宅壮一文庫、上智大学、日本出版学会、読書人、本の学校の5団体共催となった。人徳が高く多方面で活躍された植田さんらしく、多くの人が集まった会となった。

本書は、副題に「最終講義」とあることからも分かるように、上智大学の講義をもとに生前に企画されたものである。10年前に上智大学を退任するにあたり行った「最終講義ノート」を元にした1章、「出版論」の講義を再現した2章、日本出版学会と出版研究について語った3章から構成されている。若い編集者に向けて企画されたのが、結果的に遺稿集となった。

その大半は、ノートや口頭報告での書きおこし記録であり、あるいはウェブ掲載のままに終わった原稿である。それが本の形にまとめられ、読者に届いたのは、下村照夫さんの力による。下村さんもまた、植田さんの薫陶を受けた一人であり、出版社退職を機会に個人出版社を起こし、出版研究書の刊行を続けてきた。6年前に「若い編集者のための本」の執筆を依頼したが、植田さんが体調を崩し、企画が実現されないままだったという。まさに編集者の手によって日の目を見た「植田康夫の編集論」である。

単行本収録にあたって著者の最終的な校閲を経ていない論考も含まれるとしても、読めばどの頁からも在野性を重んじた植田理論があり、本への愛情があふれだし、植田節とも言える木訥で誠実な口吻まで伝わってくるようである。今後、植田さんを知らない若い出版人も増えていくだろうが、この本を通して植田さんと出会っていただきたい。筆者おすすめの一文は、3章に収められた「在野的で自立的な学会をめざして」だ。在野で出版学に取り組む人へのエールである。

筆者は、4期8年にわたり植田会長体制を出版学会事務局長として支え、門前の小僧ではないが、そばで多くのことを教えていただいた。植田さんの経歴が際立つのは、週刊読書人の編集長から上智大学の教員となり、定年後、再び週刊読書人の編集主幹に就任したことである。当時、大学出版部の編集者だった筆者に声をかけ、「植村くんね、君もいつか、多くの先輩方のように編集の世界からアカデミックに移るかもしれない。僕も出版現場からアカデミックに行った一人だけど、僕のように、再び現場に戻る人は、たぶん初めてだと思う」と、それが待ち遠しくてしょうがないと話してくれた。

出版学を拓いた大先輩の研究者は他にいるし、作家や編集者、雑誌を取り上げて語れる出版ジャーナリストや評論家もいる。だが、植田さんのように、その二つの領域で第一人者になった人はいない。出版現場と学問の間に、太くて大きな橋を架けられた人が最後に残した導きの書である。
この記事の中でご紹介した本
知の創生と編集者の冒険 植田康夫の最終講義「出版の過去・現在・未来」/出版メディアパル
知の創生と編集者の冒険 植田康夫の最終講義「出版の過去・現在・未来」
著 者:植田 康夫
出版社:出版メディアパル
以下のオンライン書店でご購入できます
「知の創生と編集者の冒険 植田康夫の最終講義「出版の過去・現在・未来」」出版社のホームページはこちら
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