スクラップ・アンド・ビルド 書評|羽田 圭介(文藝春秋)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
更新日:2018年11月8日

受験も、将来への夢も、諦めないでやり直してもいい

スクラップ・アンド・ビルド
著 者:羽田 圭介
出版社:文藝春秋
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第153回芥川賞を又吉直樹の「火花」とともに受賞し、話題となった羽田圭介の「スクラップ・アンド・ビルド」(初出「文學界」2015年3月号)

「じいちゃんなんて早う死んだらよか。」が口癖になってしまった87歳の祖父と暮らす孫、健斗。高齢となった祖父への自分の態度が自己中心的になってきていることに気がつき、どう終末期を迎えさせてあげればいいのかを悩んでいた。そこで、介護職を務める幼馴染に相談すると、過剰な介護で楽をさせて死なせてあげる「足し算介護」を勧められ、祖父に究極の尊厳死をさせる手助けをすることに。さらに健斗は何か集中できることが欲しい一心で、なぜか毎日筋トレに励む。次第に健斗の介護によって祖父の体は弱っていき、自身も介護生活を通して、弱者へ寄り添えるように心境が変化していく。祖父の介護生活から人生の再構築していく、面白さとリアリティーのある物語。

私は、介護については少し興味がある。中学2年生の時に、職業体験で老人ホームを訪れた事があるからだ。元々、祖母と生活しているので、おばあちゃんおじいちゃんとお話しすることは好きだったので、楽しかった。ホームでは、ほとんどの人が車いす。ご飯を自分で食べることが難しいので私が食べさせる。お風呂、トイレなど生活すべてを手伝う。まさに「足し算介護」の現場だった。そこで感じたのは、介護の大変さはもちろん、過剰な介護に嫌気は差さないのかということだった。しかし、利用者の方々に聞いてみると、早く帰りたいという人もいたが、楽に生活ができてたくさんの人達と会話ができるので楽しい、というお話も聞くことができた。苦しくてもリハビリをさせて自主的に生きさせようとするよりも、主人公の行った介護の形は間違った形ではないと思う。死にたいと言ったり、生きたいと言ったり、わがままな高齢者に対する苛立ちとか、やりとりなど、作者は、実際の体験ではなく、書物などで調べて小説を書くそうだ。でも、その描写は私がホームで体感した場面が多くあった。改めて作家さんは凄いと思う。

題名の「スクラップ・アンド・ビルド」という題名の意味は「再構築をする」という意味らしい。何もすることがなくなった主人公は、祖父との介護生活の中で、無謀な夢を叶えるための資質が祖父にはあると信じ、転職活動を諦めずに取り組み、最終的には自分自身の学歴では入れないような会社に入ることができた。

“受験生“という名前が付いた最近の私は、小さいころに見えていた未来が想像出来なくなり、このまま死んでしまうのではないかと、ネガティブなことしか考えていなかった。けれどもなぜか、介護がテーマの小説で主人公と祖父とのやりとりや、主人公のバカっぽいけれど頑張る姿に勇気づけられた私がいた。この作品を通じて、受験も、将来への夢も、諦めないでやり直してもいいんだ、頑張ってゆかなくてはと思わされた。やっぱり、私の中で、本は大切な存在だ。
この記事の中でご紹介した本
スクラップ・アンド・ビルド/文藝春秋
スクラップ・アンド・ビルド
著 者:羽田 圭介
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
「スクラップ・アンド・ビルド」出版社のホームページはこちら
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