そろそろ本当の忍者の話をしよう 最新版ビジュアル忍者ガイドブック 書評|山田 雄司(ギャンビット)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年11月17日 / 新聞掲載日:2018年11月16日(第3265号)

忍者の魅力と奥深さ
これまでとは違ったロマンを掻き立てる

そろそろ本当の忍者の話をしよう 最新版ビジュアル忍者ガイドブック
著 者:佐藤 強志
監修者:山田 雄司
出版社:ギャンビット
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FUJIYAMA、GEISYAと並び、NINJYAは外国人にも人気が高く、日本を象徴するアイテムの一つになっている。忍者といえば、黒装束を着ている、手裏剣やマキビシを使う、敵に捕まったら自害するなどが頭に浮かぶが、これらは小説や時代劇で広まったイメージに過ぎない。

忍者は『萬川集海』『正忍記』などの伝書を残しているが、もともと表に出てはならない存在だけに、その実像を正確に説明できる人は少ないように思える。

だが近年、青森県、福井県、佐賀県などで忍者の活動内容を記した史料が発見され、歴史学者による研究が始まった。またこれらの地域では、忍者をインバウンドや地方再生に活用する取り組みも行われている。

『忍者の歴史』など忍者関連の著書もある歴史学者の山田雄司が監修した本書は、最新の研究で判明した忍者の実態、忍術を伝承する現代の忍者のインタビューと実演、忍術書に書かれた忍術が再現できるかの実験、忍者を題材にした全国の観光施設など、硬軟取り混ぜたトピックを多数の写真を交えて紹介している。そのため、忍者について学びたい初心者から筋金入りのマニアまで楽しめるのではないだろうか。

伊賀と甲賀、真田家が治めた吾妻など、忍者の里として有名な場所が幾つかあるが、これらには山や谷に囲まれた複雑な地形、強大な権力者に支配されておらず地縁、血縁で結ばれたグループが統治していた、山岳信仰が盛んだったという共通点があるようだ。

山岳信仰を支える山伏は、道無き道を自在に移動し、サバイバル技術を身につけていただけに、忍者と親和性が高いことはすぐに想像できる。ただ近年は、読み書きを教える寺院が多かったからこそ、山岳信仰の地で忍者が生まれたことが分かってきたという。忍者は、中国からもたらされた書籍から仕入れた薬学、火薬などの知識を応用し独自に発展させたが、その中には馬に関する文書もある。長い修行で速歩術を身につけるより、馬を活用する方が簡単かつ合理的なので、忍者が馬術を得意としていたのは納得できるし、外国の技術を素早く自分のものにしたところは、技術立国日本の原点といえるかもしれない。

興味深かったのは、松前藩の圧政にアイヌが蜂起したシャクシャインの乱で情報収集を行った弘前藩の忍者、外国船が往来する幕末に活躍した佐賀藩の忍者など、歴史的な事件の裏側で動いた江戸時代の忍者たちの姿である。平和だった江戸時代でも各大名はインテリジェンス部門を作り忍者を抱えていたが、能力の高さゆえに松本藩に雇われた甲賀出身の芥川家のようなケースもあれば、石高が減らされた福井藩ではポストの削減で二〇人の忍者の半数がリストラされたというので、その悲哀は現代の勤め人に通じるものがある。

本書に登場する忍者は、フィクションの忍者より活動が地味で、忍術も科学的な根拠に裏打ちされた散文的なものが多い。だが最新研究で明らかになった忍者像、まだまだ不明なところや空白が多い史料は、これまでとは違った忍者へのロマンを掻き立ててくれる。その意味で本書は、忍者の魅力と奥深さに改めて気付かせてくれるのである。
この記事の中でご紹介した本
そろそろ本当の忍者の話をしよう 最新版ビジュアル忍者ガイドブック/ギャンビット
そろそろ本当の忍者の話をしよう 最新版ビジュアル忍者ガイドブック
著 者:佐藤 強志
監修者:山田 雄司
出版社:ギャンビット
以下のオンライン書店でご購入できます
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