第71回野間文芸賞  第40回野間文芸新人賞  第56回野間児童文芸賞 受賞作発表|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

受賞
更新日:2018年11月23日 / 新聞掲載日:2018年11月23日(第3266号)

第71回野間文芸賞  第40回野間文芸新人賞  第56回野間児童文芸賞 受賞作発表

このエントリーをはてなブックマークに追加
乗代雄介氏、金子薫氏、安東みきえ氏
11月5日、東京都内で野間三賞の受賞作が発表され、第71回野間文芸賞には橋本治氏の『草薙の剣』(新潮社)、第40回野間文芸新人賞には乗代雄介氏の『本物の読書家』(講談社)と金子薫氏の『双子は驢馬に跨って』(河出書房新社)、第56回野間児童文芸賞には安東みきえ氏の『満月の娘たち』(講談社)が受賞作となった。

会見で野間文芸新人賞の選考委員の高橋源一郎氏は、「今回は非常にレベルが高く、三作、もしくは四作が受賞してもおかしくないのではないかという印象を持った。受賞した二作には共通点があって、ある意味通常の小説のパターン通りではなく、現代文学が抱えている課題と真正面から闘っているような小説だと言っていいかもしれない。乗代さんの作品は、非常に沢山の引用があってペダンティックとも言えるが、同時に独特の雰囲気を持っていて、文学、読書、書くということへの狂気に満ちた愛情の表白といった物語だと読めた。途中からは選考委員というよりも本当に面白いと思いつつ読んでいた。
金子さんの作品は、簡単に言えば幻想小説で、日常の論理ではありえないことが起きるのだが、選考委員の多くがその強引な世界に引きずり込まれて強い支持が多かった。二人の作品は、ものを書くこと、読むことを中心にした小説だと言ってもいいかもしれない。この一見内向きに見える小説は、本当は外に向いていると感じた。今の分かりやすいものしか認めない想像力が奪われた時代に、正々堂々と想像力で世界を解釈し進んでいくことがこんなに魅力的だということを認めさせる作品を生み出してもらったことが、僕たちは選考委員というよりも同じ書き手として大いに共感し、力づけられた」とそれぞれの受賞作について評した。
草薙の剣(橋本 治)新潮社
草薙の剣
橋本 治
新潮社
  • オンライン書店で買う
受賞者の会見では各受賞者がそれぞれに受賞の喜びを語り、記者からの質問に答えたが、野間賞の橋本氏は体調不良のため欠席し、代わりに受賞にあたっての文章が以下のように代読された(一部を抜粋)「『草薙の剣』は、それ以前に私が書いた『巡礼』『橋』『リア家の人々』の上に立つ作品です。『巡礼』以下の三作品は、ある時代の中に生きる個人の物語ですが、三作目の『リア家の人々』を書いた後で、これ以上は同工異曲になるだけだと感じました。「時代の中に生きる」と言っても、実際は時代に流される人達ばかりです。「これではだめだ」と思った私は、「時代の中に生きる個人」ではなくて、これを引っ繰り返した「複数の個人がバラバラに生きている時代」を物語として捉え直すことを考えました。

それが大変なことと分かったのは、書き始めた後です。芯になる十歳違いの六人の主人公達の航跡はあらかじめ年表の形でまとめていましたが、それを一つの物語にするのはまた違う苦労がいります。なにしろ登場人物は、相互に関係のない六人です。彼等の両親、あるいは祖父母の話もそこに入り込みます。これを一つにまとめるのは、破綻のない文章を書くだけで、文章は「時代」です。相互に関係のないエピソードを淀みなく続かせるために、二行先、三行先の文章を考えながら「ここは連用形で続けるか、あるいは読点で一拍置くか、それとも一旦句点で句切って接続詞で続けるか、あるいはそのまま平然とぶつ切りにして続けるか」という試行錯誤を続けまして、そのおかげで拙速主義の私としては珍しい、一作に二年半の時間がかかりました。

そうして『草薙の剣』はやっと完成したのですが、完成したものを読み返して、私はやっと「賞にふさわしい作品が書けた」と思いました。実際どうなるかは分かりませんでした。またしてもなんの注目も浴びずに寂しい思いをするだけになるかもしれないと思っていました。そして癌が発覚して病院に入り、余分なことは忘れました。「野間文芸賞受賞」の報らせが届いたのは、退院直後のことです。素直に嬉しく思い、私に賞を授けて下さった方々に感謝いたします。」

授賞式は12月7日に都内にて行われる。
この記事の中でご紹介した本
本物の読書家/講談社
本物の読書家
著 者:乗代 雄介
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
草薙の剣/新潮社
草薙の剣
著 者:橋本 治
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
双子は驢馬に跨がって/河出書房新社
双子は驢馬に跨がって
著 者:金子 薫
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
満月の娘たち/講談社
満月の娘たち
著 者:安東 みきえ
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
「満月の娘たち」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
乗代 雄介 氏の関連記事
橋本 治 氏の関連記事
金子 薫 氏の関連記事
安東 みきえ 氏の関連記事
受賞のその他の記事
受賞をもっと見る >
学問・人文 > 評論・文学研究 > 日本文学研究関連記事
日本文学研究の関連記事をもっと見る >