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American Picture Book Review
更新日:2018年11月27日 / 新聞掲載日:2018年11月23日(第3266号)

ドリーマーズ

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『Dreamers』Yuyi Morales著・画(Neal Porter Books)
新しい土地での萎縮、緊張、疎外感。どこに行き、何をすればいいのか判らない。そもそも言葉も話せない。そんな日々の後に、ついに自分の夢もこの土地で広がり、きっと叶えられると知る瞬間がやってくる。以後の道筋がすーっと目の前に見通せる。なにものにも代えがたい、胸が大きくふくらむ瞬間だ。一時的な訪問なら見知らぬ土地で迷うのもまた楽しい。けれど移民にとって新しい土地、新しい国は終の住処となる場所。だからこそ、自分の居場所を見つけることがなにより重要になる。

『ドリーマーズ』は、イラストと文章をともに手掛けたジュジ・モラレスの自伝的な物語だ。ジュジ自身が生後2ヶ月の息子を抱っこしてメキシコからアメリカにやってきた移民なのだ。祖国とは何もかもが違うアメリカ。英語でかかってくる電話に「¡ Ay !(アイ!)」、地下鉄の複雑な路線図に「¡ Ay !」、公園の噴水で息子に水浴びをさせ警官に注意されて、ここでも「¡ Ay !」。スペイン語で「あぁ!」だ。

そんな母と幼い息子はある日、図書館に巡り会う。これも祖国では見たことのないものだった。 え? 好きなだけ本を見ていい? ええ? 家に持ち帰ってもいい? 英語が読めなくても絵や写真にとてつもなく魅せられた。ふたりでどんなジャンルの本も〝見た″。やがて息子は成長し、若い母親も英語を覚えた。英語で読んで、書いて、絵も描いて、ふたりで物語を紡いで、声なき弱者、移民の声を世界に届けることができた。ジュジはイラスト、写真、刺繍などをたくみに組み合わせた素晴らしい画によって、母と息子の新天地冒険の旅を描いている。

ドリーマーとは単に「夢見る者」を意味しない。子供の頃、ビザを持たないまま親に連れられて米国に移住し、育った若者たちを指す。アメリカ国籍を持たないものの、アメリカしか知らない若者たちだ。オバマ大統領はドリーマーたちを祖国へ強制送還させない努力をした。

11月現在、数千人の中米人によるキャラバンがメキシコとアメリカの国境を目指して北上中だ。祖国での貧困とギャングによる殺人をも含む暴力に耐えかね、メキシコまたはアメリカでの亡命申請を求める人々だ。10月にホンジュラスを出発し、酷暑の中、すでに2500キロを歩き、さらに国境線まで2000キロを歩く。しかしトランプは法で定められている亡命申請を受け付けず、国境線に5000人の兵士を配備して入国を阻止すると発表している。
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