今中哲二氏インタビュー〈飯舘村長泥地区をフレコンバックの最終処分場にするな〉(聞き手=佐藤嘉幸)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年11月23日 / 新聞掲載日:2018年11月23日(第3266号)

今中哲二氏インタビュー〈飯舘村長泥地区をフレコンバックの最終処分場にするな〉(聞き手=佐藤嘉幸)

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第2回
長泥地区の「除去土壌汚染再利用実証事業」について

佐藤 嘉幸氏
佐藤 
 次に、飯舘村の長地区での「除去土壌再生利用実証事業」についてお聞きしたいと思います。この問題はごく最近出てきた問題ですが、概要は次の通りです。飯舘村の除染で出た汚染土から一キログラムあたり五〇〇〇ベクレル以下の土壌を選別して、飯舘村の中で唯一帰還困難区域である長泥地区の農地を、その土壌で覆土して「再生利用」する。そして、その上にさらに汚染されていない土を覆土して農地に使い、園芸作物や資源作物などを育てる、という計画です。住民が長泥地区全体の除染を国に要望したところ、除染とバーターで出てきたのがこの案で、住民側としては「苦渋の選択」として受け入れるしかなかった、という記事が出ています(寺島英弥、「帰還困難区域「飯舘村長泥」区長の希望と現実(上)——動き出した「復興拠点」計画」、デイリー新潮、二〇一八年五月一八日)。また、この計画の問題点をまとめたファクトシートが、FoEのホームページで公開されています(「〔ファクトシート〕除染土再利用・埋め立て処分…二本松、飯舘村長泥地区、栃木県那須町の実証事業」、二〇一八年一〇月一一日)。この計画について、今中先生の考えをお聞かせいただけないでしょうか。
今中 
 私自身は原子力屋で、原子力の法令にずっと付き合ってきています。その立場から見て話します。まず、福島第一原発事故で起きた放射能汚染は、これまでの法律の想定外であったということです。放射性物質なり被曝を扱う法律には二つあって、原子炉は原子炉等規制法(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律)、そして大学などで使っている放射性物質は放射線障害防止法(放射性同位元素による放射線障害の防止に関する法律)によって規制されています。それぞれ放射線施設に関する管理区域が定められており、そこから出る廃棄物は、原則的に、すべて放射性廃棄物になる。

二〇年から三〇年前に、原子炉解体の話が持ちあがってきたときのことです。解体の過程で出てくるゴミを、全部放射性廃棄物として扱っていたら膨大な量になって大変なことになる。そうした事情を踏まえて、放射性廃棄物として扱わなくてもいいレベルを決めましょうということになった。当時は「すそ切り」と呼ばれていましたが、今はクリアランス基準(レベル)と言っています。二〇〇五年の原子炉等規制法の改正に伴い、大雑把に言えば、セシウム137などのクリアランスレベルは、一キログラム当たり一〇〇ベクレルに定められた。その時に対象になったのが、東海第一原発です。一九九八年に運転停止となり、廃炉が決定された。廃炉で生じるクリアランスレベル以下の廃棄物は、何に再利用してもいい。例えば原発廃材でフライパンを作ってもいい。このフライパンで焼いた目玉焼きを毎日食べても、そこから受ける被曝は一年間で一〇マイクロシーベルト以下となり、被曝を気にするようなものではない、という考え方でクリアランスが導入されたわけです。

東海第一原発の解体作業の話を聞いたことがありますが、すごく大変なんですよ。解体で出てくる莫大な量の廃棄物の放射線量を全部測って帳簿を作る。膨大な作業なんです。そうした解体作業をやっているときに起きたのが福島第一原発事故でした。すると、そこら中がクリアランスレベルをはるかに越える放射能汚染だらけになった。私から見たら、地域全体の何もかもすべてを放射性廃棄物として扱わないといけない。

こうした法律想定外の事態に政府がどう対応するのかと思っていたら、原発事故によって汚染されたガレキや土壌などを処理するために作られたのが、放射性物質汚染対処特措法です。そして、一キログラム当たり八〇〇〇ベクレルという「指定廃棄物」の基準を設けた。この数値以下の汚染物質は、一般廃棄物として管理型処分場で埋め立てできる。実は、これは微妙な数字なんです。どういうことか。一キログラム当たり一万ベクレルを越えると、従来の放射線障害防止法における放射性物質に該当する。それを扱うには、今だったら原子力規制委員会に、昔であれば文科省に届けないといけない。そういうものがごろごろ転がっているので、八〇〇〇ベクレルに決めた。一方、汚染対処特措法の枠内に「除染特別地域」というのがあります。そこは避難指示地域のうち帰還困難区域を除いたところが対象で、国が直轄で除染することになりました。

飯舘村の場合、長泥地区を除いて除染特別地域となり、国の直轄除染が実施されました。こちらには八〇〇〇ベクレルという基準はありません。全面除染ということで、汚染レベルに関わりなく、田んぼ、畑、宅地周辺の土壌五センチをはぎ取って除染が行われました。その結果、二三〇万個のフレコンバッグが発生したそうです。そのうち、草木などで燃やせるものは仮設焼却場で燃やして、灰を中間貯蔵施設へと持っていく。そして、残った一七〇万個の除去土壌フレコンバッグはそのまますべて中間貯蔵施設に持っていく、という約束でした。

ところが、二〇一七年五月に福島復興再生特別措置法が改正され、帰還困難区域を除染し避難指示を解除して居住を可能とする「特定復興再生拠点区域」を定めることになりました。帰還困難区域を抱える市町村が「拠点区域復興再生計画」を申請し、内閣総理大臣が認定すると、国の予算で事業が実施されるという仕組みです。そして、飯舘村のはじめの拠点区域復興再生計画では、長泥地区集会所のまわりだけを除染して新たにコミュニティーセンターのようなものを作るということでした。地区住民からもっと広汎な除染をやって欲しいと要望があって、それがいつのまにか、除染とフレコンバック土壌再利用がセットとなった「環境再生事業」として出てきたわけです。私がこの話を聞いたのは今年のはじめで、計画が動き出したら、長泥にフレコンバッグをどんどん持っていって埋めていくんだろうと思っていました。しかし、一〇月九日に、環境省の担当者との質疑応答を聞いていたら、今年度はまずは実証試験だということです。五〇〇〇ベクレル以下のものに限って〇・一ヘクタールで再生資材として利用する。そう明言していました。


    *
佐藤 
 「飯舘村長泥地区環境再生事業の概要と現況報告」(環境省、二〇一八年八月二七日)を見ると、〇・一ヘクタールの農地での実証試験の後、三四ヘクタールの農地で「実証事業」を行う、という計画が示されていますね。
今中 
 本年度決まっているのは、今言ったように、〇・一ヘクタールであり、そこでまずはやってみるということです。実証しながら、地域を広げていく。環境省の役人の話を聞いていると、そういうスケジュールで進めていくようです。
佐藤 
 もしうまくいけば、今後広大な農地で、汚染土壌を「再生利用」することになりますね。
今中 
 「再生利用」というと聞こえがいいようですが、それは環境省の方便で、実態は汚染土壌の最終処分です。担当者の話では、こういう話が出てきたからまずは実証試験をする。やはり汚染レベルを気にしていて、飯舘村だったら五〇〇〇ベクレルを越える汚染土は山ほどあるけれども、汚染レベルの低いものから選んで持っていく、ということのようです。私どもとしては、実証試験反対の声が長泥地区住民から上がっていない状況で試験を止めるのは難しいと思っていますが、五〇〇〇ベクレルがキチンと担保されるのかなど、実証試験の内容について第三者チェックが必要だと思っています。
佐藤 
 長泥の土壌は、除染しなければ、五〇〇〇ベクレル以上ですね。
今中 
 二万~三万ベクレルです。それをまず除染して、除染で出た汚染土は中間貯蔵施設に持っていく。
佐藤 
 環境省は最初、道路や鉄道、防潮堤、海岸防災林などを作る際に、五〇〇〇ベクレル以下の汚染土を覆土して処理する、という方針を出していました。つまり、農地はこの計画には入っていなかったわけです。その後、かなり強引な計画拡大をして、汚染度の処理を進めつつある、という印象を受けます。
今中 
 飯舘村から、長泥地区の「環境再生事業」の話が出てきたから、拡大したのだと思います。
佐藤 
 二年前に出された「再生資源化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方について」という環境省の文書があります(二〇一六年六月三〇日)。この時点では、農地の「環境再生事業」という話は一切出ていない。後から農地を計画に加えている。長泥のケースが出てきたので、農地を加えたということですね。
今中 
 役人が言っていたことによれば、最初は村から話を持っていったということだけれど、その当りの事情はよく分からない。
佐藤 
 しかし、住民が自発的に、農地に五〇〇〇ベクレル以下の汚染土を覆土してもいいと言うのか。現状では長泥地区の住民は計画に同意しているにしても、やはり国は、帰還困難区域で除染もしてもらえない、という住民の立場の弱さに付け込んで、そうした同意を半ば強引に取り付けたのではないか、という印象があります。
今中 
 それはそうです。農地の「環境再生事業」については、恐らく環境省がはじめに言ったか、だれかが村に入れ知恵したのか、あり得る話ではあるけれども、実際にはよくわかりません。
佐藤 
 「環境再生事業」に農地を含めることに、IISORAは反対していますね。その理由をお聞かせください。
今中 
 飯舘村長泥地区をフレコンバッグの最終処分場にするなということと、これを突破口に、同じようなことが近隣にも展開されたらまずい、という声を出しておこうということです。
佐藤 
 私が本当に不条理だと思っているのは、除染で出た汚染土を覆土する場合、それが道路などで、その上をコンクリートやアスファルトで固めるというのならばまだ話はわからないでもないですが(もちろんそれ自体も、全国に無秩序に汚染土を拡散することになるため、許容できません)、農地として再利用するというのが理解できないんです。覆土するのは農地でなくてもいい。その上に汚染されていない土をさらに覆土するとしても、汚染土壌はそれによって完全に封じ込められるわけではない。汚染物質が人に影響を及ぼさないような、もっと別のやり方があるのではないか。
今中 
 それは、例えば環境省が「農地再生」という名目にしたいからですよ。「再生」という言葉に拘っている。環境省が、あそこで本当に何かを作りたいと思っているわけではない。
佐藤 
 それはやはり、実験がうまくいけば他の場所にも広げられる、という目算があってやっているということですね。そうした動きがある中で、今中先生やIISORAは、今後の動きを監視していくという考えを持っているわけですね。
今中 
 それは、地元の方からの要請もありますから。
佐藤 
 長泥について、IISORAでは、今後どのような活動をしていく予定でしょうか。
今中 
 一二月に東京で小さい集会をします。今どういう問題が生じているのか。福島県外の廃棄物最終処分場に反対している地元の人たちも一緒になって、シンポジウムを開く。そうやって一般の人に情報発信し、周知させる。来年三月、福島でも、IISORA主催でシンポジウムを予定しています。また、糸長浩司さんや私は、継続的に現地で放射線の測定を続けていく。
佐藤 
 問題提起が必要だということですね。
今中 
 そうです。問題提起、情報発信するのがIISORAの役割だと思っていますから。
(二〇一八年一〇月一二日、東京・神田神保町、読書人編集部にて)
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