俵万智『サラダ記念日』(1987) 会うまでの時間たっぷり浴びたくて各駅停車で新宿に行く|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2018年11月27日 / 新聞掲載日:2018年11月23日(第3266号)

会うまでの時間たっぷり浴びたくて各駅停車で新宿に行く
俵万智『サラダ記念日』(1987)

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『サラダ記念日』には「待つ時間を楽しむ」というシチュエーションを描いた短歌が何首も出てくる。より速く効率的にするのが良いという社会の風潮に逆行するように、わざとゆっくり動いて「時間」を体中で受け止めようとする。そんな余裕を感じさせる歌が目立つ。今改めて読み直してみると、ずいぶんのんびりした生活だなと感じてしまう。 歌集の出版当時、俵万智は東京都町田市在住で、そこから神奈川県相模原市の橋本高校に通勤していたそうだ。したがってこの歌の「各駅停車」とは、小田急小田原線であることがわかる。〈君の待つ新宿までを揺られおり小田急線は我が絹の道〉という直球で路線名の入った歌もある。小田急小田原線の新宿行きは各駅停車、快速急行、急行、ロマンスカーが入り交じる。本当はもっと速い便に乗れたけれどあえて時間のかかる各駅停車を選んで、快速や急行よりは空いているだろう車内でゆっくり読書でもしながら新宿へ向かったというわけである。町田駅から新宿駅までの所要時間は、現在のダイヤだと1時間3分。少なくとも1時間以上は、「会うまでの時間」として必要だった。 『サラダ記念日』は小田急電鉄の宣伝にそのまま使えそうなくらいに小田急の沿線風景がよく詠まれているが、具体的な駅名のまま登場するのは新宿駅くらいである。俵万智にとって小田急沿線は、江ノ島と勤務先の高校以外は基本的に固有名詞では描かれることのない街であったようだ。
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