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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年11月27日 / 新聞掲載日:2018年11月23日(第3266号)

連載 観客との関係 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 83

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2017年のカンヌ映画祭にて
HK 
 ゴダールといえば、先日カンヌ映画祭で会見を行っていました。何よりも印象に残ったのが、質問と返答が噛み合っていなかったということです。30年以上前にセルジュ・ダネーが、『パッション』のカンヌ記者会見に立ち会った際には、ゴダールは「真実はそこにはない」と応える謎めいた返答をする師のような役回りを演じている、と評していました。ゴダールの会見では、奇妙なな質問が出て、それにゴダールがそれなりに返答するのは昔からのようです。しかし、他の監督に対しても、なんとも言えない微妙な質問ばかりでした。それに対する答より、ジャーナリストのあり方が気になりました。例えば、ジャファール・パナヒに対して、上映作品に関する質問はほとんどなく、イランの政治状況を聞いていました。これについては、パナヒの置かれた立場を考えれば、まだ少し理解できるのですが、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)が女優との関係を聞かれたりと、苦し紛れの質問が飛び交っていました。ドゥーシェさんは、長年にわたりそのようなジャーナリストを相手にしてきたはずです。昔と比較して映画ジャーナリストの質は変わってきているのでしょうか。
JD 
 昔から、変わることなくロクでもないものです。実をいうと、私はそれほど多く映画祭の記者会見やジャーナリズムの経験があるわけではないのです。なぜなら、昔からカンヌに行くのを拒否してきたからです。本当に得るものがない。少し前に話した、ヒッチコックの『鳥』の記者会見からもわかるはずです。
HK 
 そうは言っても、ロカルノやボローニャで毎年講演したり、毎週のようにシネクラブで観客との対話は行っていますよね。
JD 
 私が行っているのは、記者会見とは別のことです。「ゲームの規則」を作るのは私です。なので、好き勝手にさせてもらっています。当然観客には沿って話を進めていきます。しかし、相対的に合わせているだけです。
HK 
 時代と共に、シネクラブで質問する観客に変化はあったのでしょうか。
JD 
 それほど大きな違いがあるわけではありません。変わることなく、賢明だとは言えない質問ばかりです。
HK 
 ジャーナリストも、そうではないですか。
JD 
 一つ大きな変化があったとするならば、今日の観客たちは、当然のことながら、以前の観客よりも多くの知識を持っています。しかし、知識があるからといって、映画を見られているということには繋がりません。加えて、知識偏重の気風が強まっています。
HK 
 確かに、僕も横から眺めていて、そのような印象を受けます。発言をするためにマイクを渡されると、自分の知っている僅かな精神分析理論やフェミニズム理論に当てはめた物語理解を披露する人や、映画の撮られた国や時代、その政治的背景や文化などを教えてくれる人がたくさんいますね。質問ではないですし、聞いていて面白いものではありません。
JD 
 何も面白いところはありません。「ありがとう」と言うだけです。

私は映画について何か話さなければいけない時に、上映の前に話しをするようなことは絶対にありません。もし上映の前に話しをするような依頼があれば、断ります。私がひとつ理解できないのは、ベルナール・エイゼンシッツが、私とは正反対に、上映前に話しをしたがることです。上映後よりも上映前に重きをおくのです。そのようなあり方の背景には、「私は知っている。知っていることを話したい。私が知ってるならば真実に違いない。だから黙って大人しく話しを聞け」という態度があるのだと思います。
HK 
 僕は、ベルナールの話は毎度楽しく聞いてます。彼が映画について話をする時、例えばドイツ映画やソヴィエト映画に関して、当然誰も知らないような話を持ってくるではないですか。そういえば、この前カフェでベルナールと一緒にいた時、「ジャンは観客との対話に見せかけたモノローグをしてるのではないか」とからかわれていましたね(笑)。
〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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