巽孝之著『パラノイドの帝国 アメリカ文学精神史講義』(大修館書店)刊行記念 異端の時代のパラノイド・スタイル----ホフスタッターを超えて---- 巽孝之×森本あんり トーク&サイン会レポート|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年11月30日 / 新聞掲載日:2018年11月30日(第3267号)

巽孝之著『パラノイドの帝国 アメリカ文学精神史講義』(大修館書店)刊行記念
異端の時代のパラノイド・スタイル----ホフスタッターを超えて----
巽孝之×森本あんり トーク&サイン会レポート

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11月21日、東京・神保町の東京堂ホールにて巽孝之著『パラノイドの帝国 アメリカ文学精神史講義』(大修館書店)刊行記念イベントが行われた。「異端の時代のパラノイド・スタイル――ホフスタッターを超えて」と題し、本書著者で慶應義塾大学教授の巽孝之氏と国際基督教大学学務副学長、同教授の森本あんり氏によるトーク&サイン会で、アメリカ社会の構造を知り尽くした2人が文学、政治、宗教などの観点から現在のアメリカについて語った。

巽氏の新刊『パラノイドの帝国』はアメリカ精神史のキーワードで「反知性主義」と並び論じられる「パラノイド(陰謀論)」について巽氏のこれまでの論考を集積して解き明かす内容である。赤狩りや反テロ戦争に典型的に象徴される「パラノイド」という病的傾向こそがアメリカ文学の豊穣をもたらした要因であることを、トマス・ピンチョン、フィリップ・K・ディック、レイ・ブラッドベリ、サミュエル・R・ディレイニー、スティーヴ・エリクソンなど多様な作家の作品論を通して論じ、トランプ以降の時代の表現の可能性を展望する1冊である。

森本氏も8月に『異端の時代 正統のかたちを求めて』(岩波新書)を刊行したばかり。なぜトランプは世界を席巻し続けるのか。世界に蔓延するポピュリズムは果たして民主主義の異端なのか正統なのかを、異端発生のメカニズムを解明することによって現代社会の深層に迫る。キリスト教史の展開から丸山眞男らの議論を精緻に辿ることによって「正統と異端」の力学を浮き彫りにし、現代人のかくれた宗教性とその陥穽を示す内容である。

森本氏は2015年に『反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体』(新潮社)も刊行していて、「反知性主義」を下敷きにしつつ、今回のトークテーマであるアメリカのパラノイドについて約1時間半語り合った。
第1回
■パラノイド・スタイルとは

巽 孝之氏
被害妄想を指す語でよく「パラノイア」という単語が使われるが、「パラノイド」とはどう違うのか。2つの単語が持つ違いについて巽氏は「両者の違いは1965年にリチャード・ホフスタッターが著書『アメリカ政治におけるパラノイド・スタイル』の中で定義しています。「パラノイア」が指す被害妄想は、自分が絶えず人から責められ、非難されていると思いこむ個人レベルの精神状態のことです。私の好きなフィリップ・K・ディックはこの「パラノイア」的作家だと言えます。対して「パラノイド」あるいは「パラノイド・スタイル」とはなにか。それは国家レベルの被害妄想。国家が何らかの陰謀によって陥れられようとしている、それを心配するメンタリティなんです。この被害妄想が先鋭化すると極右に走ります」と解説する。続けてホフスタッターが「スタイル」という語を用いたことについて「彼が「スタイル」という語を使うことによってバロックやマニエリスムのようにある意味、芸術史の1ジャンル的なくくり方をしていて面白い表現です。まさに「パラノイド・スタイル」という系統の文学作品や映像作品が作られていて、そういった作品に対する論考を集積したのが本書『パラノイドの帝国』なんですよ」と述べた。

森本氏は『パラノイドの帝国』について「文学は一種の虚構だといえる。その虚構から現実が作り上げられていくということを論じたのが本書のテーマなんですよね。そう考えると今のトランプ現象はまさに「パラノイド・スタイル」のカテゴリーで語られるべき事柄なのではないでしょうか」と評する。
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この記事の中でご紹介した本
パラノイドの帝国 アメリカ文学精神史講義/大修館書店
パラノイドの帝国 アメリカ文学精神史講義
著 者:巽 孝之
出版社:大修館書店
以下のオンライン書店でご購入できます
「パラノイドの帝国 アメリカ文学精神史講義」出版社のホームページはこちら
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