第28回  Bunkamura ドゥマゴ文学賞 授賞式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年11月30日 / 新聞掲載日:2018年11月30日(第3267号)

第28回  Bunkamura ドゥマゴ文学賞 授賞式開催

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神様の住所(九螺 ささら)朝日出版社
神様の住所
九螺 ささら
朝日出版社
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十一月十二日、第二八回Bunkamuraドゥマゴ文学賞の授賞式が東京都渋谷区・Bunkamuraで開催された。パリのドゥマゴ賞のユニークな精神を受け継ぎ、毎年ただ一人の選考委員が、その年に刊行された作品の中から最も優れていると思われる文学作品を選出する、Bunkamuraドゥマゴ文学賞。今年の選考委員・大竹昭子氏により受賞作に選ばれたのは、本書がデビュー作となる、九螺ささら氏の『神様の住所』(朝日出版社)。授賞式の模様をレポートする。(編集部)

Bunkamura・B1F「ドゥマゴパリ」テラスで開催された授賞式では、選考委員による報告の冒頭で大竹氏は選考委員を引き受ける際のためらいから語り始めた。「昨年の春頃、Bunkamuraの方から選考委員をお願いしますというお便りが届いたときは青天の霹靂だった。というのは、私という書き手は外から見ると捉えどころのない大変わかりにくい存在だと思っていて、どこかのジャンルを代表しているわけでもなければ帰属している場所があるわけでもない。フィクションとノンフィクションの境目、言葉と写真の境目のような領域の接するところについて考えてみることが私にとっては面白かったし、ジャンルの壁を超えて書くことは私なりに意味があると思ってやってきて、いわば自分の書くものだけに責任を持って書いてきた。そういう権威とは無縁で生きてきた人間が選考委員を務めるということはまずないわけで、ほとんどお断りするつもりで打ち合わせに臨んだ」。
大竹昭子氏㊧、九螺ささら氏
大竹氏がそこで「私みたいなものに選考委員を頼むと世間がまず納得しない、受賞者の方もありがたくないと思う」と伝えたところ、「どんな方が何を言い出しても私たちが全面的に守る」という答えが返ってきた。そこまでの覚悟がおありならと、大竹氏はためらいつつ選考委員を引き受けたという。

ドゥマゴ賞の選考にあたって大竹氏は、「数多ある文学賞の対象にならないような作品を選び出すのが自分のミッション」だと捉え、次の三つの方針を固めた。①既成のジャンルにおさまりきらない作品であること。②表現とは何かを根本から問う姿勢をもち、それが理屈ではなく言葉に対する切実な感情に支えられていること。③著者が初めて世に問う作品であること。

そして、今年の六月に九螺ささらさんの『神様の住所』に出会い、「一読してこの作品が全ての条件を満たしているということに非常に驚き、そしてほっとした」。大竹氏は受賞作を次のように評した。
「九螺さんの作品は情ともう一つ、人間というものを感覚器官のように捉えるフィルターがあって、そのことによって視野が広がっている。地球の外から人間存在を望遠鏡で眺めているような、そういう不思議な感覚になる。九螺さんの作品の最高の魅力はこの見晴らしの良さで、霞がかかったような見通しのきかない今の時代に言葉というものへの強い信頼と、絶対言葉にしてみせるんだという強い意欲、自分の内側と外側の世界を往復して循環することによってまるで水車のようにエネルギーを生み出していく力、そういうものが作品から伝わってくる。このような書き手が現れたことは大変心強いし、これからも大いに期待を寄せていきたい」。

受賞の言葉で九螺氏は、「私は十五年前に文章修行のため家出のような勢いで家を出て一人暮らしを始めた。先日、引っ越してからずっとためてあった書類の入っている段ボール箱を初めて開けたとき、ぎょっとするようなものが入っていた。それは明らかに自分の筆跡で、しかも筆ペンで書かれたほとんど遺書のような手紙だった。その手紙は母に宛てたもので、「ここにあるものは「短歌研究新人賞」に応募する「神様の住所」の連作の作品です。私が死んでいたらこれを送ってください」という内容だった。まるで記憶になかったが私は一人暮らしで一人で死ぬ可能性があるわけで、それを母に送ってもらいたくて書いておいたのだったが、その手紙の最後に米印で「※簡易書留で送ってください」と書いてあった。遺書なのに最後に事務連絡まで書いてあって九年前の自分よくやったなと(笑)。その「神様の住所」という連作で「短歌研究新人賞」の次席をいただいて、もしいつか本を出すようなことがあればこのタイトルで出したいと五年前に思っていた。今このように賞をいただいているが、ここにたどり着くまでに死ぬ可能性というのはあったと思う。私は家を出るのもいつも心配で火事になるんじゃないかとガスレンジも使わない生活をずっと送ってきて、今回いろんなきっかけが重なってこのようなチャンスに恵まれ、奇跡的なことで大変光栄に思っている。ドゥマゴ文学賞をいただけると聞いたときは、本が出来たばかりで全部出し切った後でほとんど死んでいた感じだったので喜ぶとか驚くとかできなかったが、これまでの受賞者、選考委員の方々のお名前を見たときに、美しい獣たちの名前が並んでいるなという気がした。もし私がこの最後に名前を連ねるのであれば美しき獣たちの末席を汚すことになるわけで、そのプライドに恥じないような生き方を一生するということを誓うことになるだろうと思った。今回賞をいただくことに決めたので、一生そのプライドのある生き方をして、その結果として誰かが奇跡的だと思うような、そういうことを感じられるような作品を、生きているうちに書けたらいいなと思っている」。

※大竹昭子氏と九螺ささら氏の受賞記念対談の模様は次号に掲載します。

この記事の中でご紹介した本
神様の住所/朝日出版社
神様の住所
著 者:九螺 ささら
出版社:朝日出版社
以下のオンライン書店でご購入できます
「神様の住所」出版社のホームページはこちら
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