連載 パトリス・シェロー ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 84|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年12月4日 / 新聞掲載日:2018年11月30日(第3267号)

連載 パトリス・シェロー ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 84

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エイゼンシッツ(左)とドゥーシェ
JD 
 ベルナールの、その言い方(「ジャンは観客との対話に見せかけたモノローグをしてるのではないか」)には反論の余地があります。いずれにせよ観客との関係について話をするのに、ベルナール・エイゼンシッツを例としてしまったのは、あまりよくありませんでした。ベルナールはいい友人ですし、彼の仕事は並外れています。私が彼を例に出したのは、上映前にしか話をしない点に納得がいかないからです。しかし、ベルナールの話は興味深いものです。
HK 
 ここ最近ベルナール・エイゼンシッツの行なっている活動は、彼の専門分野であるソヴィエト映画やドイツ映画の紹介だと認識しています。シネクラブやコンフェランスを訪れると、その手の映画では想像できないほどに人が入っています。上映前にベルナールによる紹介―講義といったほうが正確かもしれません―が行われた直後に、映画を見に来た人から、その時代の政治や文化についての質問が多く入ります。観客を見渡すと、東ヨーロッパに関わりのあるような顔つきばかりなので、ベルナールの紹介を楽しみに映画館に来る人々は、シネフィルとは映画を見る目的が異なっているようです。
JD 
 ベルナール・エイゼンシッツの行なっている分析は、私の作品分析とは異なる方法によってです。ベルナールの持つ強みとは、映画史に関する知識です。歴史家としての特徴を色濃く残した批評家なのです。歴史家であるかぎりにおいて行わなければいけないのは、各々の時代の状況を踏まえた上で分析対象を理解することです。生活の様式、作品の受け取られ方など、あらゆることに関して、私たちの今生きる時代と同じように理解されていたのではありません。そのような方法論は、ありとあらゆる歴史家の責務です。そして、優れた歴史家は、時代と反響しあい道理を与えます。時代が作品の上でいかにして機能し、作品は時代の中でどのような役割を演じたのか、時代と作品の間に理解を生み出すのです。
HK 
 良い歴史家の条件はわかるのですが、おそらくこれから先、映画史に限っては、ベルナールの水準にまで達することができる人は出てこないかもしれません。彼は、最近の作品をも含んだ、本当に多くの映画作品を見ています。
JD 
 彼は非常に多くの作品を見ていますし、本当に真面目な人です。私が、最も評価している一人です。友人といるときも観客の前に立つときも変わらず、真剣に話をします。加えて、彼は私がシネクラブで話す内容を気に入ってくれているようです(笑)。
HK 
 話題を変えて、前から気になっていたことに関しての質問をします。どうしてパトリス・シェローの映画に出演することになったのですか。友人だったわけではありませんよね。
JD 
 依頼があったから、出演しただけです。交流があったのではありません。その当時の私はそれなりに知られた存在だったので、シェローは私を映画の中に写し込みたかったのです。なので俳優としてお金をもらって、仕事をしました。下手な演技だったと思いますが、問題なく出演シーンは残っています。『王妃マルゴ』は、悪くない作品だと思います。重要な作品ではありませんが、悪くないというだけです。
HK 
 勝手な理解かもしれませんが、映画史を振り返ると、おおよそ何か面白いことをやっている人というのは、ファスビンダーのようにして、映画のシステムの外部から来ていますよね。そして、ファスビンダーが現代の映画に対して影響を与えたように、映画の世界自体を変えてしまう。
JD 
 まさしくその通りです。
HK 
 例えばフランスのヌーヴェルヴァーグは、映画に対する内省から出発していますが、当時の映画のシステムにとっては、批評的映画作りは外部の存在でした。一方で、外部の世界から来たとしても、これはフランスによく見られる傾向だと思いますが、演劇の演出家が映画の世界に入ってくるとおおよそ面白くありません。そのいい例が、パトリス・シェローだと思います。 〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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