小高賢『怪鳥の尾』(1996) 「富士山だ」乗りあわす子の声きけば一気になごむ「ひかり」の空気|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2018年12月4日 / 新聞掲載日:2018年11月30日(第3267号)

「富士山だ」乗りあわす子の声きけば一気になごむ「ひかり」の空気
小高賢『怪鳥の尾』(1996)

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歌は世につれ世は歌につれというわけで鉄道はその変遷とともにずっとポピュラーソングに歌われてきたが、これがどういうわけか、新幹線になったとたんぐっと数が減少する。インターネットの歌詞検索サービスで調べてみたら新幹線が出てくる曲は108件で、そのうちのほとんどがSUPER BELL"Z の車内放送ソングと槇原敬之『遠く遠く』のカバーで占められていた。新幹線は速度と効率性だけを求めるような移動手段だから、ドラマを生み出しづらいのかもしれない。しかしもっと速い飛行機は、新幹線の10倍以上も歌われているのだが。新幹線はいまひとつロマンに欠ける乗り物とみられがちのようだ。 このことは短歌でも似たような傾向を示していて、新幹線になったとたんに極端に歌に詠まれにくくなる。ただ、ポピュラーソングにみられない特徴として、「高度経済成長時代の象徴」として新幹線が詠まれるケースが散見される。「ひかり」は1964年の東海道新幹線開通とともに運行が始まり、いまも現役のベテラン新幹線だ。すごい速さで東西の二大都市をつなぎ、その途中では日本の象徴である富士山を視認できる。富士山に無邪気に驚く子どもの声になごむことは、戦後復興を果たした日本の高度経済成長へのプライドにつながっている。小高賢のこの一首は、富士山と「ひかり」の結びつけ方がいたって下品なのだが、一方で戦後世代の日本人のちゃちなプライドを鋭く言い表しているともいえなくもないのだ。
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